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小さな本を作りました(創作って楽しい)。

こんなときだから、と世の中のみなさんが大変役に立つすばらしい事業や企画などを立ち上げられておられたりする中、毎日子と遊びごはんを作りその中になんとか仕事をねじこむ日常をまわすだけで精一杯で「ねぇなんかずっとうっすら疲れてるんやけど人様のお役に立つことまでまったく体力も脳みそも行き届かない私ぁいったいなんなんだ?」と日に何度か打ちのめされてますぽこですこんにちはでも元気だよ21時には寝落ちしてるから。

失礼。つい冒頭からあふれでました。日頃が。

でもほんと、そういう、地味な打ちのめされ感に近いものを感じている方、わたしひとりじゃないのかもなと頭をよぎる今日このごろです。大変な状況にある現場の話に触れると自分は全然大変じゃないなと思う。そうして今日もまとめ買いした食材の在庫管理しながら献立を考え、ごはんを作るのであります。自分や家族の日常を今日も保ち、回すのであります。

そう、家事ってなんだか「保つ」「回す」なんだ。たとえば部屋をきれいに「保つ」ための片付けや掃除、家族の健康を「保つ」ための食事づくり、服や食器をきれいに「保つ」ための洗濯や皿洗い。きれいになった!と思っても数時間後にはまた汚れている。またきれいにする。エンドレス回転。

保つ、回すって言いかえれば「維持」なのかなと思ったりします。「維持」ってパワーかかってるんだけど、なかなか見えづらい。

そんな家事の中で唯一わかりやすく「新しいものを生み出す」のが料理だと思っているのですが、その創作物もさしたる評価のないまま30分もたたぬうちに家族の胃袋にとりこまれ、元気を「保つ」に形を変えてゆく。「それもすごいことだよ」と言われても、やっぱり生み出した成果は見えづらい。

なんというか、「ゼロから新しい価値を生み出す」みたいな言葉が、とてつもなくはるか彼方にきらきらと感じたりするようなのであります。

常時からそうではあるのですが、こんな情勢だと周りの方がすばらしいものをどんどん生み出してゆくものだから、なおいっそう「なんか私ずっとうっすら疲れてるけど、毎日ただ暮らしてるだけで何も人様の役に立つこと生み出していないしいったいなんなんだ……」とたまに打ちのめされたりする。

いやそもそも新しい価値を創出してなくてもいいよ、いいのだよとわたしは言いたい(自分のため)。そして今、みなそれぞれの持場でそれぞれに奮闘されておられると思うのだけれど、実に見えづらい「保つ」「回す」に日々リソースを割いておられる全人類にも最敬礼を。

さて、そうして自分の日常のことしか考えられていないわたしが何をしていたかというと、日常のすきまをぬってちびちびと、自分による自分のための本を作っていました。わかりやすくいうとたぶん同人誌というやつです。

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2019年の8月に定期購読マガジンをはじめたとき、所信表明としてのnoteにこんなことを書きました。

“どういうやりとりがあったにせよ、とりあえず定期購読マガジンができた。

ちなみにたとえ読者がゼロでも、納得できるものが溜まっていったら、選りすぐりを集めてちっさな本でも作れたらいいなあ……、と妄想している。方法なんて知らないけどこれから考える。だから誰にも読まれなくても「いつか本にしてやるんだ」というモチベーションでひとりもくもくと投稿していこうと思う。”

わたし以外のだれも気にとめていなかった一節だと確信していますが、自分の中では心の中でずっとその気持ちを持ちつづけておりまして。奇特な読者の方々からいただける貴重な購読料をもとに、本作りにチャレンジしてみたいなとの思いを温めつつ、たんたんとエッセイを貯めてゆきました。

そんな中、昨年「文学フリマ」の存在を知り。こんな場があるのか楽しそうだな〜と、この5月6日に予定されていた文学フリマ東京(※中止)に申し込んでいました。せっかくならその文学フリマに初出店するのを機に、紙本づくりを実現しよう!と考えたからです。

そこでこの3月、4月あたりでごりごりと孤独に編集・校正や表紙デザインなどをすすめ(知識の乏しい中、Web上にあるいろんな先人たちの知恵に助けられたのでこのあたりのリンク集も別noteでまとめたい……)、印刷・製本手配を経て、ようやっと手元に「紙の本」が届きました。この時勢下で稼働くださっている印刷所の方や配送関係の方々には心から感謝です。

目次や裏表紙はこんな感じ。

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基本的には定期購読マガジン『とるにたらない話をしよう』でこの半年間に書きためてきたエッセイの一部を抜粋し、加筆修正して紙の本にまとめたものです(あとがきは書きおろし)。

5月の文学フリマ東京は中止になってしまいましたが、ひとまず形にしたので、文フリが開かれるはずだったこの日にあわせ、通販の片隅においておくことにしました。

くわしくは、リンク先のショップページをご覧ください。気が向いたら、ぜひ応援いただけるとうれしいです。

(※なお、定期購読マガジン読者の方にはささやかすぎる限定特典があります。まだチェックされてない読者の方はマガジン記事をご覧ください〜)

ところで「保つ」「回す」ことに精一杯の日々を送る中、「自分がゼロから生み出した創作物」を手にしたよろこびはひとしおでした。

いまこのnoteをくどくど書いているのは、宣伝が正直たぶん8割くらいですけど、あとの2割くらいは、紙の本つくり楽しいよみんなもっとやってみたらどうよ、みたいな気持ちの行き場がなくて消化させたいからです。

ちなみに、小説じゃなくてエッセイでも「創作」っていっていいのか、自信がなくて辞書をひきました。すると、3つ意味があって、1番目にはこんなふうに書いてありました。

「それまでなかったものを初めてつくりだすこと。」

この意味にふれたとき、そうだ、それやりたかった……としみじみ思って。

なんだかすごく満たされた気持ちになりました。

創作ができて、わたしは嬉しい。まずは自分がいちばん嬉しいです。

誰かのために、というモチベーションで始まったことじゃないけれど、それっていけないことなんだろうか。そうじゃないと思いたいです。

わたしはこの小さな本作りがとても楽しかった。わくわくしました。内容としては同じはずなのに、縦書きにして整えてゆくだけで別の読みものになってゆくようで。編集・校正はともかく、レイアウトとかデザインとか畑違いのところもやったのでときどき気が狂いそうになりながら作業していたときもありますが、それでも楽しかったんです。ゼロから生み出すことが。

だからひとことでいえば、究極の自己満足本なのだと思います。どうしたって自分がいちばん嬉しいので。

でも自分がいちばん嬉しいこの本が、だれかのもとに届いたとき、結果として、そのひとに「クスッ」としてもらえたら、そんなに嬉しいことはないなあ、と思います。自分を犠牲にするんじゃなくて、まず自分が嬉しくて、だれかも嬉しくなるなんて最高じゃないか?

それぞれがそれぞれの日常の中で奮闘されている中、この本を「パッ」と手にとって適当なところでひらいて、エッセイひとつだけ読んで。

それでなんとなく気分転換できたり、「うわーこのひとぼうっとしすぎでしょ」って呆れて笑ってもらったり、ちょっとこれ食べたくなってきたわ、ってなったり、子どものころのこと思い出して親に電話してみたくなったり。そんなことがもし起きるなら、それは最高にうれしいなあと思います。

まぶしい情報があふれるWebの世界に疲れてしまったとき、パッとひらける気楽な本。自分が欲しいものを考えたら自然とそんなふうになりました。

リビングやキッチンに「ぽいっ」って放っておいてもいいように、子どもに多少の牛乳しぶきを飛ばされてもいいように(笑)、表紙と裏表紙はPP加工をオプション追加したのが地味なこだわりです。たぶん、我が家の食卓に放っておいても安心できるような気楽さの本を(無意識に)目指してたんだと思う。最近、本棚までいく気力がないのですよ。

あと、それなりに厚みがあるから、全部一気に読めなくても、くじびきみたいに「パッ」って、ひらいたところを少しだけ読む、みたいに読めるもの。家事や育児の合間にも読めるもの。産後のあの、小説を読めなくなった脳でも!さくっと読めるもの。そんな本がほしかったし、作りたかったです。

どこかでだれかがこの本を手にとって「クスッ」としてくれているかもしれない。そんなことを今日も妄想して、それを励みにまた目の前の「暮らし」をがんばりたいと思います。

さて、これを書いている今は夕方なんですが。遅めの昼寝にはいっていた娘がぼちぼち起きそうでむずむずしています。なんなら寝ぼけながら「ふんっ……」って気張ってるから、この気配はたぶんアレですね。替えのオムツ在庫を確認しつつ、このすきに炊飯器のセットでもしておこうと思います。

それでは、また!

8割は宣伝だから、またリンクはっておこうっと。冷やかしにきてね。

ではでは。今日もよき日をー。

(おわり)


※追記:内容や文体の雰囲気が知りたい方は、こちらから記事タイトルや無料公開部分をいくつかご覧いただけると、雰囲気がわかるかなと思います↓

※追記2:メイキングをまとめました


※追記3:みなさまからの声

みなさまが添えてくださる写真がまた、机だったり、コーヒーの横だったり、畳だったりPCの上だったり……と、各地の日常感にあふれていて感動しています。みなさん、作者よりよほど腕の立つ日常づかい。ありがとうございます!! noteまで書いてくださっている方もいて、とても嬉しいです。


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