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知るか! #たいらとショートショート

「先にお飲み物お伺いしましょうか?」

いつもの居酒屋のアルバイト。今日は宴会の予約が入っている、どこかの会社の懇親会らしい。幹事らしき方が一足先に席に着いているので尋ねる。

「いや、全員来てから注文しますので」

「かしこまりました」と言って営業スマイルをするが、本音を言うとそれはめんどくさい。先にピッチャーでビールを出しちゃダメだろうか。飲み物の注文を受けてそれを作ってからコース料理を出して…今日はめんどくさいの確定である。

ぞろぞろと人が集まってくる、全部で20人ぐらいだろうか。注文は結局ほとんどの人が生ビールだった。やっぱピッチャーで出してやればよかった。

飲み物をお出しして少しすると乾杯の合図が聞こえる。さあ、慌ただしい時間の始まりだ。

順番に料理を出していくが、大抵こうゆう宴会は飲みがメインで料理を食べない。食べてない皿を下げるわけにもいかないので、どんどんテーブルが狭くなっていく。こっちの苛立ちとは裏腹に宴会は熱を帯びていく。

もうほとんどの人が出来上がっていて会場は笑い声に包まれている。こちらも料理はほとんど出し終わってあとはデザートを出せば終わりだ。一息つこうとした瞬間、「そこの店員さん!」と呼ばれた。くそ。

「いかがされましたか?」声の主はこちらにグラスを向けながらこう言い放った。「同じのちょうだい!」

は?イライラがピークに達した。いや、こんだけ人いるし客はあんたらだけじゃないんだ。「同じの」で分かるわけないだろうが。

そんな苛立ちを必死に飲み込み、とびっきりの営業スマイルを貼り付けて、少しの嫌味を込めて言ってやる。

「ご注文はいかがなさいますか?」(684文字)

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