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アイ・ミス・ユー

 自分の子育てが間違っていたのだろうか。大学生になっても娘は反抗期のままで、自由奔放な性格に手を焼いていた。
 そんな娘が、去年の今頃「私、カナダに行く」と宣言した。ワーキングホリデーのビザを取り、休学届けを用意し、アルバイト代も貯めていた。「長年の夢」を止(と)めることはできなかった。


 心配をしたらキリがないが、Webで見る写真や、短いメールで無事を確認する日々だ。仲間と肩を組んだ笑顔に、ほっと胸をなで下ろしている。


 しかし、渡航前に思い描いていたようにいかないことも多いようだ。アルバイトで慣れないレジに戸惑ったり、アパートの契約でトラブルがあったり。先日は風邪をひいて寝込んだらしい。


 何もしてやれず、頑張りなさいと言うことしかできない。そんな時は、電話を切ったあと切なくて胸が痛くなる。遠く離れて、こんなに大切な存在だったのかと、改めて気づいた。


 先日、娘からピンクの封筒が届いた。鉛筆でびっしり書かれた中に、「母の偉大さをたたえるカードです」とあった。
お母さんが偉大じゃないんだよ。あなたが大人になったんだよと言いたかった。


 小さく娘の名前を呼んでみたら、無性に会いたくなった。バンクーバーも、今は花いっぱいの季節だろうか。

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