見出し画像

冷や飯を食わされたのか

義母が楽に寝起きできるようにと、実家で放置されているベッドを使ってもらうことにした。

まずは車で1時間、実家のある町へ行く。
ベッドはマットレスの代わりに畳を敷いて使っていたので、畳屋さんに1畳の畳を注文することにした。
それが、どの畳店も廃業したり閉まっていたり、ようやく5軒目でお願いすることができた。

畳1畳は1.5万円ほど。
安いベッドを買った方がいいくらいだが、それはもう新しいモノを増やしたくない思いがあるからだ。

次は実家に行きベッドを解体して、夫の実家へ運ぶ。
多少の補強などは夫の日曜大工だ。

義母は喜んで、作業の様子を見ていた。
汗をかきながら準備する私たちも、やりがいがある。
とりあえず持って行った置き畳を使って、いい感じのベッドが出来上がった。
義母も私たちも満足の笑顔だ。

お昼を過ぎたので、ご飯にすることにした。

私は前日に作った筍ご飯を持ってきていた。
義母と夫、私の3人でも残るほど、充分ある。
もし残れば、義母が夕ご飯に食べてくれればいいと思い、多めに持って行ったのだった。

義母の炊いたフキや、いただき物という筍の土佐煮もある。
そんな季節だ。

しゃもじを持ってきて「たけのこご飯持ってきたから」と私が分けようとした時だった。
義母が私の前にあるご飯茶碗に、
「育さん、これ食べなさい」
そう言って、ラップで包んだカラフルなおにぎりをポンと入れた。

ちらし寿司らしかった。
あ然としながら広げると、すきやばし次郎じゃなく、北島三郎でもなく、すし太郎らしかった。
(くどい表現ですみません)

ぎゅっと固めて餅状になったちらし寿司は、桜でんぶたっぷりで、ピンクに染まっている。

なぜ?

私だけが明らかに食べ残しのちらし寿司って、嫁いじめ?

認知症の疑いは全くない義母の、気持ちを想像してみた。

負けず嫌いな義母は、私の作った筍ご飯を認めるわけにはいかないのだろう。
「このちらし寿司の方が、きっと美味しいよ」と言っている。

夫も見てることだし(わかってくれるだろうと)、一部が乾いたすし太郎をゴクンと飲み込んだ。

ま、義母のためと思って作った筍ご飯だから、私は食べられなくても何ともない。
ただ、義母は自分の料理を褒めてほしいんだろうな、おばあちゃんになってもプライドは尊重してほしいんだろうなと思った。

結局うまくやるためには、私が出来が悪いままがいいんだと、少し開き直り気味に感じる出来事だった。


この記事が参加している募集

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?