野球小説が面白いアメリカ人クリエイターとシアトル・マリナーズの試合を観戦した話(2/2)
強肩・俊足の女性外野手が実力でマイナー・リーグを這い上がっていく小説「The Ninth Man」の作者Billとシアトルで会い、マリナーズの試合を観に行くことになりました。
「ハーイ!」
ホテルのロビーで手を挙げたのは、がっちりした体格の白人系男性でした。年齢は私とほぼ同じとわかりました。
ふたりでマリナーズの本拠地、SAFECO Fieldに向かいます。
「まず、チケットを手に入れよう」
小雨の降る球場前の道を歩くと、ポケットに手を突っ込んで、
「Ticket……Ticket」
とつぶやくオジサンが何人もうろついている。
いわゆる《ダフ屋》であーる。アメリカでも非合法なのだろう、かなり抑え気味な営業活動だ。
Billが交渉し、
「まあ、こんなもんだろう、いいよな?」
と内野席をゲット。
「いいかい、アメリカで野球観戦の始まりは球場からじゃない、野球バーからだ」
マリナーズファンが集まるらしい、スポーツバーで生ビールを頼み、Cheers!
「これが重要なステップなんだ」
「……なるほど」
バーの壁にはイチローを描いた絵画が飾られ、今日の試合相手・開始時間を知らせる黒板が架けられている。
彼が買った席は内野席だが、けっこう上の方 ── 贅沢は言えません。内野はほぼ埋まっているが、外野席の上の方は空いている。
この年、イチローはシーズン最多安打記録の樹立可能性で注目されていた(このゲームの少し後で達成!)。
「アメリカ野球には応援スタイルがあるんだ」
とホットドッグとビールを買ってくる。
(……まあ、この部分は日本の球場と同じだな)
ホットドッグに対抗するのは、たこ焼きクンかな?
ご存じのように、7回になるとスタンドの観客が立ち上がって、「Take me out to the ball game(野球場に連れってって)」を歌います。
バックスクリーンの大型画面には、観客席が映し出されます。
個人的には、やはりこれがアメリカ野球一番の醍醐味でしょうか。
「よし、じゃ、ひと回りしてこようか」
Billに誘われ、外野席経由でぐるりと歩きます。
ブルペンを見ると、この時に在籍していた、長谷川滋利、木田優夫両投手がいました。
ところで皆さん、Billの小説の主人公、Caseyを憶えていますか?
「強肩・俊足の右翼手・左打者」
どこかで聞いたことがありますよね?
Billに小説の感想を伝え、
「Caseyはこの後、どうなるのだろう? 大リーグに行くのかな?」
尋ねると、
「うーん、構想中なんだ。続編ができあがったら出版したいと思ってるんだが……」
「出版したら、連絡してよ」
「All right」
それから、連絡のないまま年月が経った。
彼は会社でも活躍していそうだから、なかなか時間が取れないのだろう、と思っていた。
この記事を書くため、久しぶりに彼の名前をアマゾンで調べたら、ななんと、6年前に続編が出ているではないですか!
これは読まないと!
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