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教室後ろで《4の字固め》(エッセイ)

たまに小学生時代の《流行》を思い出し、
「あの頃、〇〇で✖✖、よくやったなあ」
とつぶやくと、都市と田舎の違いはありますが、ほぼ同時代を生きた同居人が応じる;
「ああ、やってた、やってた、── バカな男子が

なぜこいつは毎回毎回、形容詞「バカな」を付けなければならないのだ、と顔をしかめるところではありますが、確かにごく一部の男子はこうしたアクティビティーに参加していなかった ──「ドラえもん」でいえば、出木杉くん みたいなのがどのクラスにも2,3人いて、そいつら以外は全員参加してたけどね。

時々 ── といっても何年かに一度ですが、まったく唐突に、
「小学校時代に、教室の後ろで《4の字固め》やられたよなあ!」
と《遠い昔》を思い出すことがあります。
「首」の方ではなく、「足4の字」です。漢数字《四》ではなくアラビア数字で書かなきゃなりません。

これが、
《4の字固め》やったよなあ!
か、
《4の字固め》やられたよなあ!
で、そのクラスの男子コミュニティー内での力関係がわかるのかもしれません。

今は「男子」だけでなく、「女子」も教室後ろでプロレスごっこをする ── なら面白いけれど、おそらく、女子はもちろん、男の子たちももうそんな野蛮な遊びはしないのでしょうね、きっと。
── 服が汚れてしまうし。
── 「イジメ」と思われてしまうし。

では、なぜ当時、「服が汚れる」ことがそれほど問題ではなかったか、といえば、
・もともと汚れていたから
でしょう。
毎日毎日、同じ上下で通学する子供ばかりでしたね ── 男子のズボンにはしばしば「ツギ」があたっていたし ── ええ、少なくとも私の学区は。

では、そこに ── プロレスごっこの《ワザかけ》に「イジメ」の要素はなかったか、といえば、
・ある程度あったが、大きな問題にならない程度
── と言えるのは今振り返るからであって、当時の心境はそうでもなかったかもしれないし、組み合わせによってはかなり深刻な状況もあったかもしれません。

ただ、本物同様、
「痛タタタタ……ギバップ! ギバップ!」
リングマットならぬ教室床を手のひらで叩けば《技》は解かれたし、一般的には、
・泣いたら止める。
が暗黙のルールでした。
・泣き出した相手にさらに追い打ちをかけるのは《卑怯》
と考えられていました。
実際、「卑怯者」のレッテルを誰もが怖れていました。

「ちびまる子ちゃん」に出てくる藤木君どころではなく、《卑怯》の概念は、非常に重要だった ── と思います。

《4の字固め》は、デストロイヤーの得意技でしたが、一連の流れの中で比較的容易にかかり、《プロレス技》としてのリアリティーがありました。

これに比べれば、猪木の「卍固め」は「技」としてかなり無理があり、相手の協力がなければ簡単にはかからないように思えました。
これは私見ですが、子供たちに、
・プロレスって、ヤラセじゃないの?
と疑わせるようになった契機は、「卍固め」だったのではないでしょうか?

島根県知事は、表敬訪問したデストロイヤーに、
「《4の字固め》をかけて欲しい」
と頼んだそうです。

「教室後ろ」ではなく「県知事室」です。
永遠の「バカな男子」
がここにいました。

最後に、note内「バカな男子」にサービス動画を:


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