これはLGBTのお話ではない。あなたのための小説です。- 【彼女が好きなものはホモであって僕ではない】 浅原ナオト様
今回は商業小説になってしまうのですが、私はWeb小説で読んだのが最初なので紹介してしまいます。
本作は書籍、コミック、ドラマ化も(さらには今度映画化も)されているので、既に知っている方も多い作品だと思います。
私がオススメしなくとも既に知名度の高い作品ではあるのですが、語らずにはいられないので語ります。笑
初めて本作に目を通した時、最初の3行を読んで、「あ、これ最後まで読む奴」と直感しました。
良作センサー、感度良好です。笑
通勤途中や仕事の合間にも読んでいましたが、これは危険だ、と私は判断しました。
これ泣くわ、と。
家で読まないとダメだと判断し、続きを読みたい衝動を毎日必死に抑え込んでいました。(結局我慢できてませんでしたが)
お話は、男が好きな男子高校生が、腐女子のクラスメイトがBL本を買っている所を目撃してしまう所から始まります。
主人公の安藤くんは、クラスの皆に今見た事を黙っている代わりに、買ったBL本を読ませてくれと言う。
中身を見て、彼は思います。
これはファンタジーだ、と。
実際はこんな風ではない。
彼にとってそれは、もっと複雑で、ずるくて、簡単にしてしまいたくないものでした。
最初にこの作品のタイトルを見た時、私は主人公の男の子が腐女子の子に恋をする話かと思っていました。
全然違いましたね。笑
彼には既婚者の彼氏がいて、女の子に性的な感情を抱けなくて、それでも家庭を築きたいと思っている。
そんな少年が、考えて、考えて、行動するお話です。
あらすじはこんなもんで大丈夫だと思います。
1話でも覗いたら、あとは最後までノンストップでしょうから。笑
このお話を読んで、私が最初に思い出したのは私の親友の事でした。
私はカムアウトされた事があります。
(カムアウト:自分のセクシュアリティーを他人に打ち明け、相手との関係を(さらに)築こうとする行為のこと)
その時の私の反応は、
「ふーん(・3・)」
彼女はそっけなさすぎるその反応に、戸惑っていました。笑
もっと驚かれるかと思った、と。
私は単純に、そんなの関係ないなと思ったんです。
彼女の普段の行動や、好きなタイプの話などを聞いていて、絶対に私を恋愛対象として見ている事はないだろうなとも思いましたし。
なら友人としての彼女と私の関係には何の問題もないと思ったのです。
というか、性行為をしたい、とまではなかったですけど、同性にドキドキした事などは私にも経験があるし、彼女はそれがもっと強い人なのだろうなくらいの認識でした。
その後彼女は別の友人にもカムアウトし、周りの友人達も変わらず彼女と接しています。
ただやはり、全く何とも思わない、と思う人達ばかりでもないのだなと気付きました。
彼女本人の前では平気だよ、と言っていても、どこかで引っかかりを持っていると零す子もいます。
それはそれぞれの育ててきた大切な価値観なので、どちらも否定するようなものではないですが。
このお話の前半を読んで、少なくとも私は彼女にとって正解だと言える反応を出来たのだと嬉しく思うと同時に、彼女の苦悩の半分も理解出来ていなかったのかもしれない、とも思いました。
それを知る手がかりになる、とても良い機会を貰えたと本作にはとても感謝しています。
……ここまでが、話の前半を読んでいて思った感想です。
でも読み進めていく内に、私の視点はどんどんと変わっていきました。
私はこの作品は、LGBTの事について書いているのではないと思います。
これは、マイノリティの事を書いているのだ、と。
普通とは違う、自分の何か。
その事を言っている、と思った途端、私にとってこの話は他人事ではなくなりました。
色々な作品を読む時、私は他の方が書いたコメントも読みます。
最終話のコメント欄、この作品にも多くの読者の方がコメントを残していました。
そして皆さん、自分語りをしているのです。
そうしたくなる気持ちが、私にはとてもよく分かります。
コメントを書いている人達皆が、他人事ではない、これは自分の事を書いている、と思って読んでいるのだと思いました。
この作品は、本当にすごいパワーを持った作品です。
素晴らしい作品だ、と自信を持って言えるのと同時に、すごく悔しいとも私は思ってしまいました。
こんな作品、私も書いてみたいと。
私はこの作品で、様々な感情を経験させて頂きました。
涙も苦悩も悔しさも全部ごちゃまぜにして、腐女子の女の子にふっと笑わされる。
そんな救いのあるお話です。
読む人の人生に、残る何かをくれる作品です。
ぜひ、ご覧ください!
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