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ことばのうみのはじまり10 波のある場所
涙はどんなときに流れるのだろう。
今となっては喜怒哀楽ではなく無意識の生理現象としてたまに右目から涙が出てくるくらいである。
心が死んでいる。
最後に人前で泣いたのは2013年、地震や事故で二度と会えないだろうと思っていた高校時代の友人が会いに来てくれた時、号泣してしまった。
その時私の精神はすでに壊れていて、薬を飲みながらの展覧会だった。
子供の頃から私は泣かない子で、デパートのおもちゃ売場
ことばのうみのはじまり9 やとわれた声
中学3年の春の大会でようやくバスケ部から引退できた。
わたしを縛り続けてきた部活動。
レギュラーにはなれなかったけど、スタジアムみたいな体育館のベンチで応援してるのすら緊張した。
試合が終わり、早々に負けて悔しいフリを通路でしていたけど、心は完全に笑っていた。もうミーティングもいらないから早く帰らせてほしい。
わたしは自由になるのだ。
本当に全部忘れたいくらい部活は重荷だった。
頑張ってたメンバー
ことばのうみのはじまり8 人生のハック
どんなエピソードにも別の一面がある。
言葉にしてない部分、話さないことの引き出し。
今回はそんな描き切れていない一面の話
”おまえなら 行けるさ トム 誰よりも 遠くへ”
トムソーヤとハックのように
空の遠くへ行った同い年の幼なじみがいる。
オタマと呼んでいた。
わたしは物心つく前から国鉄アパートの団地に住んでいて、向かいにオタマが住んでいた。「はじめまして」の挨拶をした記憶は残っていない。
ことばのうみのはじまり7 善と悪
小学校を卒業する時、担任の先生がクラスでしたスピーチを覚えている。
「皆さんはとても善い人に育ってくれました。先生はみんなをどこに出しても恥ずかしくない。だからこそ言っておきたい事があります。これから先、善い人だけではやっていけない事もあるということです。みんなの素直さが先生は大好きですが、世の中には悪い人もいて、色んな人の中で生きていかないといけません。みんなの真っ直ぐな眼を見ているとそれが心
ことばのうみのはじまり6 淡さ
小学3年から同じクラスになった真中という子がいた。
頭も人柄もよく、何というか雰囲気があった。
元ドラえもんの大山のぶ代のような大らかさを思い出す。
隣の席だったからそういうのも分かったのかも知れない。
衛生検査、のような名目でハンカチ、ちり紙を持ってきているか抜き打ちで検査されることがあった。隣の席同士で確認しあい、さらには足の爪をちゃんと切っているかまで見せ合う。そんな時も二人で笑いながら照れ
ことばのうみのはじまり5
小さい頃からアパート暮らしなので
鳥類やほ乳類のペットを飼ったことがない。
小学校に入る前
母に「何か飼いたい」とねだっても「うちでは無理」という返事しか返らなかった。
動物がどこからやってくるのか知らないので、とりあえずわたしは虫取りアミを持って出ることにした。
とはいえ山に住んでた訳ではない。
地方都市の国鉄アパートの団地7棟、その敷地がわたしの行ける世界のすべてだった。結構な広さで各所に
ことばのうみのはじまり4 ゆるめの蛇口
父がマッサージ師で病院勤めだったこともあり、
歯にしろ皮膚にしろ風邪にしろ行くのは父の病院。
国鉄(のちJR)の仙台鉄道病院だ。
入ってすぐのロビーには白鳥の大きな剥製があった。
各所に中庭があり、池やジャングルがしつらえてあるのは入院患者の慰みだったのだろうか。
売店は廊下の角にあり、そこだけ丸いカーブの透明緑色のプラスチックでカプセルのように囲われていた。
気味悪さとロマンが混在した古い建物だ
ことばのうみのはじまり3 夏休み
小学校1年生の夏休みはとても楽しく過ごした。
自分の朝顔は青色が咲いてとても気に入った。
父がよく市民プールに連れて行ってくれて、ずいぶん泳ぎが上達した。
小学1年で25m泳げたのはスイミングスクールの子たちとわたしくらい。
ばあちゃんちに長く泊まり、いとこ達とキャーキャー遊んだ。
母方の叔父叔母、いとこ達はわたしにとって親兄弟同然。
長い休みには気がねのない家族が各地から集まってきた。
テレビ
ことばのうみのはじまり2 Dear my Frend
Sと呼んでおこう
すまんがお前の名前がうろ覚えだ。
ここに書き残そうと思う。
出会ったのは高校1年。
同じクラスでもない同じ部活でもない。
それなのになんで出会ったんだろう?
お前は痩せ型で色白で身長が伸びきってない、
いたずらっ子のコオロギみたいだった。
図書室や廊下で会うと
ニヤリと笑い、何かとつっかかってきた。
「美術部なんだよね?美術なんてやってどうするの?」
「おう言ってくれるな。ど
ことばのうみのはじまり1
わたしは幼稚園で挫折している。
他人と集団をつくる最初の時点でわたしは最弱だった。
登園拒否というのだろうか、入園した4月にはもう門の所で泣きわめいていた。
いじめられたという訳ではない。
むしろ活発な女の子などは構ってくれたが、
それすらわたしを泣かせる要因になって「別になにもしてないよ」と言わせてしまったりしていた。
何もかもが気に障った。一人で「ねずみくんのチョッキ」ばかり読んでいた。