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ソーシャルPM手法の勉強会 Vol.1 〜ソーシャルデザイン思考〜

こんにちは。ソーシャル・プロジェクトマネジメント研究会の久保です。
今年度は、新規入会者への説明と手法のブラッシュを目的に、1月から隔週でソーシャル・プロジェクトマネジメント(以降、SPM)手法の勉強会を行っています。(SPM手法の概要はこちらの記事をご参照ください。)
 
SPM手法では、最初に行うニーズ把握とゴール設定の解決手法として、デザイン思考を取り入れています。第1回目〜3回目の勉強会では、このデザイン思考をテーマに行いました。
 
◆ソーシャルデザイン思考とは・・
SPM研究会で考えた「ソーシャル・デザイン思考」は、下図に表すように、
現状の社会の状況や人々の行動思考を観察/体験して問題の本質を洞察し、ソーシャル課題を再定義して仮説をつくり、プロトタイピングによる試行錯誤を繰り返してソーシャル課題解決に導く、というアプローチになります。
なお、下図の①〜⑦は実施の手順ではなく、視座や行動の位置を表す「モード」と呼んでいます。

デザイン思考は一般的にスタンフォード流が有名ですが、SPM手法ではイリノイ流をベースにアレンジしています。イリノイ流を選んだ理由は、4つの象限を形成する縦軸が、論理<=>現実、横軸が問題<=>解決、というように整理できてわかりやすい点と、図の中心に①「意図を感じる」というモードを配置している点が、ソーシャル課題を自分ごととして捉えている姿勢を表し、適しているためです。
 
これまで①〜⑦の各モードで活用できるツールを試行錯誤してきました。そのうち④「インサイトを共有する」ツールの「ペルソナ」「カスタマージャーニーマップ」「3つのゴール」、⑤「アイディアを創出する」、⑥「道を構想する」のツールを中心に、解説と討議を行いました。主な内容を紹介します。

◆ペルソナ
元はマーケティングの市場開発で使われる手法で、ソーシャル課題を持っている人(=困っている人)の像を明確にするため、アイディアを出す際、共通認識を持って考えることに有効です。ソーシャル課題は複雑なので、1つではなく複数作成する場合が多くなります。
 
◆カスタマージャーニーマップ
こちらもマーケティングで使われている手法です。ソーシャル課題では、困っている人になりきって心理状態や行動様式を時系列に図示化し、困っている原因の本質を捉えたり、当事者と共通認識を持つことに活用できます。
 
マーケティングではいくつかフレームがありますが(AIDMA、REPs等)、SPM手法では、ステージを自分で考える必要があり難しい点です。スパンは課題によって1日、春夏秋冬、1年・・と、短い場合も長い場合もあります。

 メンバーから様々な意見があがりました。
・元々マーケティングの手法なので、NPO支援においては、起業の際や集客、寄付集めには使えるが、課題のあぶり出しにはどう使ってよいかわからない。
・患者の病気の課題解決では困り事を出すのによく使う。1日の中でいつ辛いか…など。
・最初のインタビューはカスタマージャーニーマップなしで臨むことが多い。何人か話を聞くうち共通の経験が出てきて、それをステージに設定する。また、1つではなく時系列と解像度を変えていくつか作ったりすると良い。
・問題を深掘りしたり状況の整理、解決策を探すステップとして使えると思われる。
 
・・このような点を、今後さらに研究会として深めていきたいと思います。
 
◆3つのゴール
こちらもマーケティングの手法で、ソーシャル課題では、困っている人がどんな結果を得たいのか(=エンドゴール)、解決した時どんな気持ちになりたいか(=エモーショナルゴール)、その先どんな自分になりたいのか(=ライフゴール)、を明確にします。
アイディアを出す前に、問題解決の方向性を固め、皆で共有するために活用します。
 
発想がないと考えるのが難しいので、ライフゴールでは「16の基本的欲求」、エモーショナルゴールでは「感情のリスト」などを参考にしたり、3つのゴールの整合性を「インサイトチェックリスト」で確認することを推奨しています。

メンバーから、「実践の場で3つのゴールをそのまま使ったことはないが、『いちばんつらかった経験』から『理想的な経験』をアイデア出しするときのキーワードになると思う」という体験談があがりました。
 
◆アイディアを創出するツール
アイデアを発散させる手法としては、ブレイン・ストーミング、親和図、バリューグラフ、シナリオグラフ、バリュー・プロポジション・キャンバス、強制連想イラスト法、など。
問題構造を図式化し、そこから新たな発想を得るための手法としては、マインド・マップ、因果関係ループ図、CVCA(Customer Value Chain Analysis)、WCA(Wants Chain Analysis)、などが活用できます。
 
◆道を構想するツール
生み出したアイデアを収束させる代表的な手法として、KJ法と親和図法を用いてグルーピングし、(評価軸を決めて)投票する、という方法があります。(例 意味のある経験リストを活用してグルーピングし、「新規性」「有効性」という評価軸で投票を行う、など)
この時、重要なのは「価値」に着目しつつ、評価軸を決定した上でアイデアを収束させ、それを記録・共有しておくことです。
また、⑦「道をつくる」に繋げるためには「実現可能性」「拡張性(スケーラビリティ、横展開)」等の考慮も必要になると考えます。
 
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次回は「ソーシャル・アジャイル手法」です。
SPM手法はまだまだブラッシュアップが必要で、引き続きメンバーの体験や意見を共有する場にしていきたいと考えています。ぜひご興味のある方は、ご参加ください。
また、こちらのブログでも継続的に勉強会の様子を紹介していく予定です。
次回以降もご参照ください。
 
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ソーシャルPM研究会の活動に興味を持たれた方は、こちらからご連絡ください。入会前の見学も大歓迎です!
https://www.pmi-japan.org/socialsg/


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