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#2 【DAO立ち上げのゼロからイチ】〜中央集権と自律分散のグラデーション

PM DAOで、DAOの組織設計をビジネス面でサポートしている@KenBizです!

PM DAO立ち上げに学ぶDAOよもやま話の連載第2回です。
第1回はこちら

今回は、「PM DAOに見る中央集権と自律分散のグラデーション」と題して、DAOの意思決定や活動のありかたについて考えてみたいと思います。

<PM DAOでの議論と現状>

そもそも、PM DAOは一人のFounderが立ち上げたDAO(になりたい組織)です。
そこに、プロダクトマネジメントに関するコミュニティに参加したい人や、Founderのビジョンに共感した人、またはなんとなくDAOが面白そうという感覚で参加した人などが集まって、いまの200人を超すDiscordメンバーを擁する組織になりました。

さて、PM DAOの初期2〜3回のmeetupは、あまり正確に記憶していませんが、10人前後くらいが参加していたように思います。

2月15日、最初期のミートアップの裏で動いていたテキストチャネル

ここで何を議論していたかというと、Founderのビジョンや考え方をシェアした上で、「PM DAOをどのようにDAOとして運営していくべきか?」という根本のディスカッションを中心に行っていました。

初期にディスカッションしたPM DAOとして目指すべきビジョン

他にも下記のようなディスカッションがありました。

A:最初は皆何をしていいか分からないと思うので、まずはFounderに色々な活動をリードしてもらいたい
B:DAOに関心があって参加したので、早期にスマートコントラクトなどを整備し、本格的な自律分散を目指したい

まさに、中央集権か自律分散か?の二項対立に近い割れ方ですね。
その後も話し合った結果、当初はAの形で進めつつ、時間をかけて段々とBに移っていこうという結論に至り、そのプロセスは初期メンバー内で「ダンダンDAO」と呼ばれるようになりました。

では現在はどうなっているかというと、引き続きAに近い位置にありつつも、少しBに寄ってきた側面もあるかなという感覚です。
Value AssessorなどのコアプロジェクトやNFT・トークンの設計・発行、Deworkによるタスク管理と報酬設計などの重要事項はFounderがリードしつつ、他メンバーはそれぞれの知見に応じてタスク処理やサポートに入る形で推進しており、DAOとして自律的に動いているとはあまり言えなさそうです。(本来はスマートコントラクトによる自律性が求められますが、まだそこには至っていないPre-DAOの段階に当たります)

一方で、Media DAOやインタビューDAOなど、個別メンバーからの提案ベースで始まり、提案者が主導したサイドプロジェクト的なものも徐々に走るようになってきました。
もちろんまだFounderとも相談しながら進めるスタイルが中心ではありますが、このように「DAOのためになると思うこと」を各メンバーが自発的に提案・遂行する取り組みが増えることは、自律分散化の第一歩であると言えるでしょう。
※個別のプロジェクトについてはHPへどうぞ!

<どこまで自律分散を目指すのか?>

さて、「中央集権か自律分散か」という問いに話を戻してみます。
「ダンダンDAO」は、現実的な進め方としてメンバーの合意に至ったコンセプトですが、「どこまでDAO(=自律分散)化すべきなのか?」という問題には答えられていません。
ここまで「段々」「第一歩」「どこまで」などの言葉が多数この記事にも出てきたことから少し感覚的に理解できた方もいるかもしれませんが、中央集権と自律分散は対立する言葉ながら、その概念は地続き的で、間にグラデーションが存在すると考えられます。
DAOと一口に言っても、そのグラデーションの中のどこに組織運営のポリシーを置くかは、DAOの性質や目的によって異なるものと見られ、必ずしも完全自律分散であることがDAOの要件ではないように思われます。

段階的なDAO化を目指す「ダンダンDAO」によるグラデーションによるDAOの定義

では、どこにポリシーを置いたら良いのでしょうか?
私の考えでは、①「DAOの主な目的のために実施するタスクの抽象性と複雑性」と、②「メンバーの背景や性質・能力」、そして③「効率性と透明・平等性」のバランスで検討されるべきものと捉えています。

どの程度"DAO"なのかを定義する3つのバランス

①「DAOの主な目的のために実施するタスクの抽象性と複雑性」

PM DAOの例を考えます。PM DAOは、その目的が「プロダクトマネジメントの知識、情報、経験を開放し、あらゆる人々が”プロダクトマネジメント”にアクセスすることを支援する」という抽象概念になっています。
これを達成するタスクは何が考えられるでしょうか。学習コンテンツの展開?情報データベースの作成?またはPM DAO自体の運営戦略のブラッシュアップ?恐らくアイデアベースであれば何でも考えられるのではないでしょうか。
でも、何が本当にPM DAOにとって優先的に取り組むべきか、効果的であるか、現実的であるかを見極めることは、現状のPM DAOメンバー全員に出来ることではないため、投票によって正しい結論が得られるとは限りません。

組織が目標を達成するための効率性を考えると、「PM DAOが何に取り組むべきか?」などの大きな/上位の課題については、それを「判断できる人」が一部中央集権的に検討・意思決定し、より細かい/下位のタスクに落とし込んだ上で、それらのタスクが他メンバーも含めて自律分散的に解決されていく形が望ましいように思われます。
ただし、中央集権的に検討・意思決定された情報が透明に公開される保証はありませんし、組織全体の意思決定の平等性も一部損なわれます。

②「メンバーの背景や性質・能力」

一方、仮にDAOメンバー全員が「判断できる人」だったとしましょう。この場合、わざわざ全員で上位課題を整理して、その後下位タスクに落としてから各人が自律分散してタスクに取り組むのでは二度手間です。最初から、各自がやるべきと思うことに自律的に取り組むべきでしょう。
この形のDAOは最も理想的である気もしてきますが、現実にはこのように均質なメンバーがDAOに揃うことは極めて稀なのではないかと思われます。

③「効率性と透明・平等性」

もう一つ、「中央集権的な上下関係が絶対にイヤなメンバーが集まっている」ケースを考えてみましょう。この場合、「判断できる人」も「判断できない人」も絶対上下関係になりたくないので、中央集権的に大きな/上位の課題を整理することが出来ません。すると、個々人がやるべきと思うことに自律的に取り組むことになりますが、「判断できない人」があまり効果的でないタスクに取り組んでしまったり、非合理な意思決定を行う可能性があるため、組織全体としての効率性は落ちていきますが、意思決定の平等性や情報公開の透明性によるメンバーの満足度向上は見込まれます。

さいごに

このように、DAOの中に一部中央集権的な要素を組み入れて効率化を図ることも考えられれば、自律分散であることを最重要視して、効率性を犠牲に快適なDAOを運営することも考えられますが、これはどちらが正解ということもなく、「DAOとしてどうありたいか?」次第であると考えられます。

また、PM DAOを例に出しましたが、もう少しそもそもの目的が具体的なDAOであれば、最初から各人が取り組むべきタスクが明確なので、より完全なDAOに近づけることもしやすくなるでしょう。何をするDAOなのか?という観点でも運営の考え方は変わってきそうです。

長々と書いてきた割に、結論としてPM DAOがどこまで自律分散化すべきか?という問いに、実は少なくともこの記事の中で明確に答えることはできません。
ですが、ここまで書いてきたようなグラデーション論を踏まえつつ、皆が活発に行動できるDAOの形を目指せるように、今後も色々なディスカッションを深めていければと思います。


以上が第2回「PM DAOに見る中央集権と自律分散のグラデーション」について記事でした!
【DAO立ち上げのゼロからイチ】は以下の内容で連載しています。

次回は「#3 DAOにおけるタスクと報酬」について書きたいと思います。
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