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玉子が先か目玉が先か (41)

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 TRFとはTetsuya Komuro Rave Factory(テツヤコムロ・レイブファクトリー)」の略。意味は”テツヤコムロが夢中になって何かを生み出す工場”というような感じのニュアンスの何からしい。思えば二十数年前、皆狂ったようにテツヤコムロに心酔していた。猫も杓子も(本当は禰子も釈氏もであり、神主も僧侶もという意味であったりする。因みに落語の”やかん”のなかには女子{めこ}も赤子{せきし}もというのが本当だという説を隠居が尤もらしく八五郎に語っている)テツヤコムロであった。やれglobeだ、ともちゃんだ、浜ちゃんだ、スーさんだと。そんなテツヤコムロ一色の世間の中で、流行りに疎い筆者は、みどりのマキバオーを読みながらアフリカの音楽を聴いていたのだが、その話はひとまず置いておこう。まず注目してもらいたいのはこのTRFであり、その文字である。この頃を改めて振り返ると、三文字のアルファベットに溢れていたのではないだろうか。PTADDTFMWYKKCCB、etc...。そしてさらに数年を経てAKBDMMOPPとなり、いまや三文字のアルファベットは日常に溶け込んでいる。その証拠にここ数年であの玉子かけご飯すら”TKG”と呼ばれるようになっている。TKG、玉子かけご飯が日本人にとって無敵の食べ物であるのは今更言うまでない。それどころか畏怖の念すら覚えるものだ。明日地球が滅ぶとして何を最後に食べますかと問われたとして、TKGと答える人は少なくないようにも思う。みんな大好きTKG、しかし、今回はここに、畏れ多くも一石を投じてみたいと思っている。それは、MYG、つまり、目玉焼きご飯である。

はっきり言うと目玉焼きご飯をMYGと言ったのは初めてである。とりあえずMYG、M(目玉)Y(焼き)G(ご飯)としたものの、これで良かったかはまだ迷っている。正確にはMDYG、M(目)D(玉)Y(焼き)G(ご飯)かもしれないし、MDYNG、M(目)D(玉)Y(焼き)N(乗せ)G(ご飯)かもしれないが、今回はMYGでご了承願いたい。

皆さんは目玉焼きをご飯に乗せたことがあるだろうか。半熟の目玉焼きをほかほかご飯に乗せ、上から醤油をかけてぐちゃぐちゃにしたことがあるだろうか。ぜひやってもらいたい。行儀の悪さと相反して、抜群に美味いのだ。想像して欲しい、焼け焦げてカリカリの香ばしい白身の端っこ、プルプルの白身、熱で温まった半熟の黄身、それらをまとめる少量の油。炊き立ての白いご飯が黄金に染まっていく、そこに気持ち多めの醤油を垂らす。玉子かけご飯と違い、温かいご飯を温かいまま食べることが出来るのだ。

ここまで言ってもTKGの勢いは止まらないだろう。当然筆者もTKGは大好きだし、手軽さから考えても群を抜いている。それにも関わらずあえてここにMYGを持ってきたのは、味では負けてないと信じているからだ。いや、両者は安易に比べられるものではないのかもしれない。TKGにはTKGの良さがあり、MYGにはMYGの良さがある。TKGで検索すると玉子かけご飯が出て来るが、MYGで検索しても目玉焼きご飯は出てこない。圧倒的格差である。しかし、この場を借りて諸君に、声を大にして、大大大にして言わせてもらいたい。

『目玉焼き乗せご飯は本当に美味しいんです!!』

たまにはMYG、どうですか。

この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com