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2021年総まとめ! - Z世代とメンズ美容の動きを振り返る

いつも読んでいただいている皆さま、ありがとうございます!お仕事の際に「+tech laboのnoteの記事読んでます!」とお声がけいただくことも幾度かあり、とても励みになりました。

今年4月から隔週でZ世代レポートをお送りしてきましたが、今年最後の記事は2021年総括回!2021年の、Z世代とメンズ美容市場の動きを振り返ります。

世間に浸透した”メンズ美容”

2018年夏ごろのBoys Beauty立ち上げ準備段階からどっぷりとメンズ美容市場に浸ってきましたが、特に盛り上がりを感じ始めたのは2020年夏ごろ。男性ファッション誌『メンズノンノ』が独走状態だったメンズビューティー領域に、同じく男性ファッション誌『FINEBOYS』が『FINEBOYS+plus BEAUTY』というメンズビューティー専門誌を創刊して地殻変動を起こした2020年。メンズ美容に特化したメディアは未だにかなり少ないため、同誌はメンズ美容に関わるすべての人にとってバイブルになっています(ただし雑誌を読むZ世代男子は少なく、実質社会人以上&業界人が読む雑誌という印象です)。

そして今年2021年、”メンズ美容”がいよいよ世間に浸透してきたなと感じる瞬間が多々ありました。テレビやネットニュースで”メンズ美容”や”メンズメイク”が注目され、お昼のワイドショーでは韓国風男性アイドルが100均コスメをショッピングする様子が映し出され、店頭でもメンズコスメコーナーが拡大し…といった、目に見えた動きが日々起きていた印象です。

その中でも特に着目すべきは、世間の許容度の高まりです。EXIT りんたろー。さんやレインボー 池田さんなど有名芸人がテレビ・雑誌・WEBなどの各メディアで美容へのこだわりを話す姿を、最近多く見かけるようになりました。その発信に対して、従来であれば「お前ほぼ女子じゃん」「綺麗になってどうしたいの?」といったようなイジりの要素を感じるリアクションがほとんどでした。しかし最近は、「肌が綺麗で羨ましい」「美意識の高さ見習いたい」「男子も美容に気を遣う時代だよね」など素直でポジティブなリアクションがTV番組内でもSNS上でも目立つようになっています。店頭展開が増え、日常の中にメンズコスメが目に触れる場面が増えてきたため、他人の目を気にしながら選ぶことも減りました。数年前なら中性的で弱々しいと揶揄された美肌を究める色白韓国系男子は、今やモテるカテゴリーの一つとなりました。Z世代男女のファンを多く抱えたアイドル発掘プロジェクト「PRODUCE 101」には美を究める男子が出そろい、ファンに「自分もなりたい」と思わせる憧れの対象となっています。

「PRODUCE 101」のWEBサイト

メンズ美容が長年拡大を見せなかった一番の理由は“他人の目”です。例えばBBクリームを塗ったら周りに気付かれるだろうか?どう思われるだろうか?といった心理的ハードルが、美容に関心があっても使用を踏みとどまらせていました。しかしこれだけ急激に世間の許容度が高まると、形勢は逆転して「美容を気にしていない方がダサい」といった新たな基準が生まれる日も近いのではないでしょうか。そしてその中核となり得るのがZ世代です。男女問わず大人の目線や意見に惑わされず、自分なりの価値観をしっかりと持つという特性があるため、たとえ大人が「男のクセに」など小言を言おうとそんなの無視して自分たちが信じる美の価値観を大事にして突き進んでいくでしょう。

※これを読みながらドキッとした方は、ぜひ価値観のアップデートを!(笑)

やっと新語・流行語大賞トップテンに入った”Z世代”

私がいる広告業界や、日々商品開発を行うメーカー界隈では何年も前から“Z世代”というワードは当たり前のように使われてきていました。そのため、今年ついに新語・流行語大賞トップテンに入りましたが、個人的には今更感を感じてしまいます。とはいえこれをきっかけに“Z世代”というワードが世に広く知られるようになったことは確かです。

Z世代はすぐに好きなモノが移り変わっていき、企業の開発サイクルがZ世代の好きの移り変わり(流行のスピード)に追いつくことが難しくなっています。スマホネイティブ、かつ、“好き”の移り変わりが非常に早いZ世代と大人のイタチごっこは、これを機にますます加速しそうです。

一方で、スマホや多様なSNSはZ世代に限らず30代くらいまでの人たちには同じくらいの速度で浸透しています。現に31歳の私は、Z世代に関する話をしながら「とはいえ自分も当てはまるんですけどねー!」と、強調して言いたくなる時がそこそこあります(笑)。ここで感じるのが「世代論の限界は度々語られてきたけど、いよいよもう限界なのでは?」ということです。世代論を軸に分析や仕事をしてきているのにこんなことを言うのは気が引けますが、確かにそうかもしれないと思うのです。Z世代ならではの事象や流行はありますが、その多くは一時的なもので、考え方や消費の特徴といった、短いスパンでは変化しない、より奥深い部分は、Z世代に限らず20代後半~30代でも同じことが言えてしまうよなぁ、と思うこともままあります。来年はまっすぐこの違和感に向き合って分析を進めることが、個人的な目標です。

本当のジェンダーレス化は無意識下で進んでいます

「ジェンダーレスコスメ」が注目を集めて久しいですが、自ら「うちのブランドはジェンダーレスです!」と一種のカテゴライズをしているブランドのアイテムは実際ユーザーにあまり刺さっていない…という印象をZ世代男子と話す中で持っています。それよりも、誰を対象にしているのか明示をせず、ブレないブランドの世界観を持ち、品質への強いこだわりを示すブランドの方が男女問わずに人気を集めています。信頼や支持は一朝一夕で築けるものではありませんが、ブランド側が世界観をしっかりと保つ、というのはどのブランドでもできることです。比較技術に長けて審美眼を持つZ世代に受け入れられるには、そういった芯を持つことが重要、ということを念頭に置いておきましょう。

2022年に向けて

TwitterやInstagramなどのSNSでは、この2年でZ世代を中心にリアルタイム投稿が忌避されるようになってきました。ストーリーズの使用がグッと減り、「リアルタイムで投稿する意味とは?」とユーザーが冷静に考えるようになってきている2021年末。TikTokやリールなど、リアルタイム性を求められないコンテンツの増加により、表向きの部分だけを見ているだけではますます彼らの嗜好を掴めなくなってしまうと感じます。Z世代理解をより深めていくために、直接コミュニケーションを取ることに引き続きこだわっていかなければ、と思います。

メンズ美容市場は加速度的な拡大が見込まれます。一般的になるにつれて、初心者/中級者/上級者といったリテラシーの差がより分かりやすく出てくるため、各レイヤーのユーザー特性やニーズをしっかりと捉えていくことに力を入れねばとも思っています。また、コスメのジェンダーレス化が進むとともに、改めて「メンズコスメとは?」を考えるようになってきました。リテラシーが高いユーザーほど”メンズコスメ”と括られる商品に対して粗く雑な印象を抱く傾向にあるため、これは近々市場課題にもなり得るでしょう。2022年はこのテーマと向き合いながら、メンズ美容市場を引き続き盛り上げてまいります。

2022年も引き続きよろしくお願いいたします!

堀 かおり
2014年、電通テック入社。2018年5月より +tech labo の研究員となり、“Z 世代”を軸として開発業務を行っている。Z世代男子に向けてメンズ美容の情報を発信するInstagramアカウント「Boys Beauty」のプロデューサー。