漢方薬とサプリメントの違いを薬剤師が解説!
「サプリメントを健康のために飲み始めてみようかな?」
「漢方薬と違いって何?どちらが身体にいいんだろう…」
健康志向やセルフメディケーションへの関心の高まりから、身体のケアを始めてみようと考えている人も多いのではないのでしょうか?
しかしインターネットはたくさんの情報がありふれているので、何から始めていいのか混乱しますよね。
この記事ではサプリメントについての説明と漢方薬との違い、それぞれの特徴について薬剤師が解説します。
サプリメントや漢方薬に関しての新しい知識をプラスして、健康的にな生活を送りましょう。
サプリメントには法律的な定義がない
サプリメントといえば、ビタミンや美肌成分が入った錠剤・カプセルを想像するかと思いますが、実はその名称には法律上で明確な定義はありません。
法律上の定義が存在しない為、「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル状の製品」がサプリメントに該当すると考えられているのが現状です。
ちなみに、いわゆるサプリメントの事をアメリカでは「Dietary Supplement(ダイエタリーサプリメント)」、ヨーロッパでは「Food Supplement(フードサプリメント)」と呼ばれています。
食品でもなく、医薬品でもないカテリ―として認識されているようです。
サプリメントと漢方薬は分類が違う
日本では健康食品が、サプリメントと最も近い意味合いを持っていると考えられます。
しかし健康食品と呼ばれるものについても法律上の定義は無く、広く健康の保持増進につながる「食品」として販売・利用されるもの全般を指しています。[1]
つまり、サプリメントは「食品」に分類されます。
一方で、漢方薬は「医薬品」に分類されており、両者は明確に異なります。
漢方薬についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事で紹介しています。
サプリメントと漢方薬の主な違い3つ
サプリメントは食事、漢方薬は医薬品と、両者には明確な分類の違いがある事が分かりました。
では「食品」と「医薬品」では何が違うのかを整理していきましょう。
主な違いとしては3つ挙げられます。
製品の品質
科学的根拠の質と量
利用される環境
それでは、1つずつみていきましょう。
①製品の品質
医薬品は有効成分の純度と量が一定に含まれており、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準:Good Manufacturing Practice)という国のルールに従って製造されています。[2]
つまり、医薬品はいつ作られたとしても同じ品質のものが製造・流通されます。
人々の健康に直接関与するものなので、当然といえば当然と考えられますね。
一方、食品であるサプリメントは必ずしもGMPで製造されておらず、同じ名称で販売されていても品質はさまざまな場合があります。
製品に含まれている成分の有効性や安全性の情報が、その製品に当てはまるとは限りません。
例えば、ビタミンCは有効的で安全な栄養素ですが、ビタミンCが配合されている製品が有効性があり安全かどうかは分かりません。
購入する際は安心するためにも、成分だけでなくメーカーや製造過程などをよく調べてから購入しましょう。
②科学的根拠の質と量
医薬品では、患者さんを対象とした安全性・有効性の試験が実施されています。
試験の方法や基準などを示したガイドラインが存在しています。
一方、食品であるサプリメントは、患者さんを対象とした試験がほとんど実施されていません。
結果的にサプリメントは、病気の治療や予防に対する有効性・安全性に関する情報が乏しく、治療・予防には向いていないという結論に至ります。
③利用される環境
医薬品は、医師や薬剤師の指示・確認などによって安全に使用できる利用環境が整備されています。
食品であるサプリメントは、原則として選択したり利用したりするのは消費者の自由です。
特定の成分を簡単に摂取できる食品ならではのメリットの一つですね。
しかし、サプリメントを過剰摂取することでのデメリットもあります。
サプリメントを使用する場合であっても、記載された用法や用量を守りましょう。
食薬区分について
漢方薬は生薬の組み合わせです。
生薬とは天然から得られる薬用植物や動物、鉱物などの薬用とする部分を、乾燥などの簡単な加工を施してそのまま薬として使用したものです。
天然由来なので、漢方薬≒食品とも考えることができます。
漢方薬の分類に関して解説していきます。
漢方薬は食品?医薬品?
漢方薬は生薬の力を組み合わせた薬ですが、食品にも存在する生薬を使っている漢方薬もあります。
例えば、
「ショウガを食べると体が温まる」
「高麗人参のサプリメントは体に良い」
などと、よく聞きますね。
漢方薬にも、生薬としてショウガや人参が使われています。
では「ショウガ」や「高麗人参」は医薬品なのでしょうか。
または食品なのでしょうか。
厚生労働省が示す「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(以下非医薬品リスト)」に掲載されています。
また、医薬品医療機器等法上で医薬品に該当しないという判断です。
つまり「ショウガ」や「高麗人参」は医薬品ではないと考えられます。
厳しい管理のもと品質が保証される生薬
「ショウガ」や「高麗人参」は医薬品に該当しないと判断されていますが、医薬品の品質管理の規定である「日本薬局方」の基準を満たさないと生薬として流通する事ができません。
日本で購入できる漢方薬の品質は、厳重に管理されています。
ショウガという植物の根茎は「生姜(ショウキョウ)」という名前の生薬です。
生薬のショウガは「日本薬局方」で規定された品質が保証されなければ使用できません。
正しい植物・部位が使われているか
重金属などの異物が規定量以下であるか
生薬として使用されるショウガは「6-gingerol」という化合物を含有することを確認する必要があります。
また、日本薬局方の規程に加え、以下のチェックも必要です。
製薬メーカーによる残留農薬チェック
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準(GMP)チェク
さまざまなチェックを受けた上で、医薬品として利用される生薬は品質が確保されます。
食品と医薬品が分けられる「食薬区分」
私たちが口にする飲食物は、原則的に食品または医薬品に分けられます。
食品と医薬品はそれぞれの法律で規制され、その法的規制の境界線が「食薬区分」です。[3]
一方でショウガのように、明確な境界線を引くことが難しい場合もあります。
人に良い影響を与える機能性成分は食品?薬?
人に良い影響を与える機能性成分は、医薬品に限ったものではなく、サプリメントなどのいわゆる健康食品と呼ばれる食品にも含まれます。
特定保健用食品や機能性表示食品の制度によって、さらに明確に差別化される食品が増えてくるかもしれません。
しかしながら、特定保健用食品、栄養機能食品、及び機能性表示食品はいずれも医薬品ではなく、疾病の治療・治癒・予防等を目的として摂取するものではありません。
これらの食品の摂取は、普段の食事からの栄養摂取や食生活の改善を基本とした上で、機能性や目安量、作用機序など公開されている情報を充分に確認するようにしましょう。[4][5]
サプリメントや漢方薬はどんな時に使えばいいの?
サプリメントや漢方薬を健康のために使う場合、どんな時に使用するのがおすすめかを解説します。
サプリメント
サプリメントは不足している成分を補給することが得意な食品です。
自分に不足している成分があると考えられる場合に摂取しましょう。
以下のステップを踏む事で最大限サプリメントを活用することができます。
普段の食事から摂取している栄養成分を把握
その栄養成分の量と推奨量/日から不足している量を検討・算出
不足していると考えられる場合、通常の食品または品質の確かなサプリを購入・摂取
サプリメントを選ぶ際はキャッチコピーに惑わされず、製品の表示内容をチェックする事が重要です。
漢方薬
病院で検査や画像診断をしても異常がないのに、自覚症状があるという場合に向いていると考えられます。
自覚症状としては以下が挙げられます。
疲れやすい・だるい
メンタル面の不調
月経不順・PMS/月経前症候群
更年期の症状
天候悪化時に調子が悪い
頭痛
花粉症
肌荒れ
風邪になりやすくなかなか治らない
二日酔い
不眠 など
原因の特定できない慢性の病気・異常、体質がからんだ病気には漢方薬が効果的だと考えられています。
一方で、病気の原因が特定でき、原因別の治療が可能な場合や手術が必要な場合、緊急を要する疾患、重症の感染症などには一般的に西洋医学の方が優れていると考えられます。
あなたの生活に漢方をプラス
サプリメントと漢方薬について解説しました。
サプリメントは法律上の定義はなく、普段の食事で足りない栄養を補う働きをします。
漢方薬は「医薬品」と定義されていますが、漢方薬を組成する生薬は物によっては医薬品と判断されていません。
しかし生薬として使用されるためには厳重な管理のもと品質が確保されています。
漢方薬は原因を特定できない疾患や、疲れやだるさなどの自覚症状がある時に効果的。
さまざまな症状の原因となる疲れの未病を漢方で回復させましょう。
漢方薬にはあなた本来の自然治癒力を高める効果が期待できます。
【参照】
[3]古倉 聡 臨床薬理 2006年 37巻 3号 p. 111-114
[4]梅垣 敬三 医薬品情報学 2011年 12巻 3 号 p. 126-131
[5]厚生労働省 e-ヘルスネット 特保(特定保健用食品)とは?
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