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【観劇記録】スーパー歌舞伎 ヤマトタケル

2024.03.02 @ 新橋演舞場

 行ってていいはずなのに意外と行ってない劇場がある一方で、特に意識していないのに定期的に行っている劇場がある。私にとっては新橋演舞場が後者。ちなみに前者は世田谷パブリックシアター。不思議だけど、ご縁としか言いようがない。

 謀反を企む双子の兄大碓命(おおうすのみこと)を誤って手にかけた弟の小碓命(おうすのみこと)は、事情を知らぬ父である帝の怒りを買い、大和に従わない熊襲(くまそ)の征伐を命じられます。大碓命の妻兄橘姫(えたちばなひめ)は、大和をあとにした小碓命を夫の仇と襲いますが、その清らかで優しい心を知り、小碓命を慕うようになるのでした。熊襲を訪れた小碓命は首領のタケル兄弟を見事討ち果たし、その勇気を称えた熊襲タケルより、「ヤマトタケル」の名を与えられます。
 喜び勇んで大和に帰ったタケルでしたが、帝の許しは未だ得られず、蝦夷征伐へ赴くことに。吉備の大君タケヒコを伴う道中は苦難の連続で、走水(はしりみず)では愛する弟橘姫(おとたちばなひめ)までも激しい嵐の犠牲となります。その後、蝦夷を平定したタケルは伊吹山の山神退治を命じられますが、この戦いでタケルは深手の傷を負うことになり…。

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/842 より引用(2024.03.20取得)

 この作品のことを知って以来、ずっと見てみたいと思っていたので念願が叶った。というか、鬼滅の刃は見る予定なかったから、正直言うと棚ぼた……(笑)。
 ストーリーがしっかりしていて、かつ視覚的にも満足できる演出。幕が下りて客電がついた瞬間「面白かった、見てよかった」と心から思えたのは、結構久しぶりかもしれない。何なら幕間の時点で「なるほどこれは名作だ」と理解できた。いや、私が言うまでもなく名作であることは証明されているのだが。

 1幕終盤の熊襲での立ち回りがすでにド派手で、これでまだ1幕なんて2幕3幕のクライマックスどうなるの?と心配になるほどだった。実際見てみると、前の幕の派手さとはまた違うインパクトの演出でしっかり超えてくるのでほくそ笑んでしまった。でもやっぱり、俵(?)が飛び交い壁が抜け落ちる、1幕のカオスさが一番好きだ。
 あと演出の話で言えば、3幕の宙乗りは別格として、熊襲の立ち回りしかり走水の嵐しかり、特殊効果的なものではなく人力、物理的な演出なのが良かった。その場に実際にないものを、別のものを使って見立てて表現するのは、演劇の醍醐味だと思う。

 歌舞伎が、というより日本人が、なのだろうが、やはり"滅びの美学"みたいなのってあるよな……としみじみした。熊襲弟、弟橘姫、もちろんヤマトタケルも。いかに誇りをもって死んでいくか、その死に様を美しいと感じ、琴線に触れるように心ができている。もうこれは抗えない。
 死んだヤマトタケルの後に残された兄橘姫たちのシーンも印象的。群像劇というわけではないけれど、主人公を食うぐらい周りの人物が立体的だった(そして私はそういうのが好き)。どうせならタケヒコとヘタルベのかっこいい姿をもっと見たかったかもしれない。

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