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【観劇記録】あのよこのよ

2024.04.28 @ PARCO劇場

 年に数回来ているPARCO劇場だが、劇場内のお手洗いの脇に旧劇場の椅子が置いてあることを初めて知った。空いてたし今後も使いたいけど、あの劇場のお手洗い、個室のドアが反射して用を足す自分が映るのが嫌で避けているからわざわざ行くのが面倒という……。

舞台は明治初期。
浮世絵師・刺爪秋斎(安田章大)は、新政府を批判したとして番屋に入れられていたが、初犯ということもあり解放され、迎えに来た弟の喜三郎と、居酒屋で宴を共にしていた。
そこで秋斎は喜三郎から出所祝いとして眼鏡をプレゼントされ喜んでかける。
さらに秋斎は居酒屋に居合わせた、未来が見えるという能力のある常連・フサに占ってもらうと、「女に出会う」と告げられる。「その女が秋斎の未来を決めるだろう」と。
そこに美しい女が男と共にやってくる。秋斎が出会う女性は彼女なのではないかと話していると、突如、刀や銃を持った男たちが現れる。そして男たちは秋斎たちに襲いかかって来るのだった……。

https://stage.parco.jp/program/anoyokonoyo より引用(2024.05.26取得)

 浮世絵師が主人公の話、とふんわりした認識で劇場に行ったので、派手な立ち回りのシーンが定期的に挟まれるなど、結構エンタメ活劇っぽいところがあるのは意外だった。会話の中の笑いどころはことごとく自分に合わなくてやや困惑したが、そういう笑いがあること自体も意外だったかもしれない。
 (今あらすじを読み返すと「刀や銃を持った男たちが(中略)襲いかかって来る」と書いてあるので、そりゃ立ち回りはあるか……私がまともに読んでないだけだった。)

 そんな感じで、外連味もたっぷりの派手さ明るさで飾られてはいるものの、根底にはずっと仄暗さというか血生臭さみたいなものが横たわっていた。その一筋縄ではいかない空気が私はすごく好きだった。生と死が表裏一体で、秋斎もそこに惹かれていたのだろうし。でも実際は"表裏"どころかすぐ隣にあって、同じ顔して並んでいる、というのがミソなのだろう。
 "死"なんて聞くとつい身構えてしまうけれど、本当はすごく身近なもので構える必要なんてない。ふっと顔を出してきて、そうなると境目もよく分からない。ということを、ぱっと見で気づかせないくらいふわりと軽いタッチで物語に乗せていたように感じた。

 そういえば、最後に「音楽」というワードが突然出てきたのはよく分からなかった。それがなくても感覚は十分に伝わっていたので、唐突に感じた(後でその理由らしきものを知って理解はしたが、作品の中ではやはり浮いていると思う)。

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