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【観劇記録】新国立劇場オペラ「椿姫」

2024.05.16 / 05.25 @ 新国立劇場 オペラパレス

 オペラはチケット高いから新国のU39優待ないと無理……のはずが、ついに定価で買う人間になってしまった(初日の後買い足した)。大人の階段をまた1つ上った気分だ。C席かD席なら、とWebボックスオフィスを開いたのに、売り切れていて我慢できずB席を買ったのはご愛嬌、帝劇か歌舞伎座へ行ったと思おう(笑)。

【第1幕】パリ社交界の華である高級娼婦ヴィオレッタは、肺の病で先が長くないことを悟っている。今夜も自宅のサロンでパーティを開催。ガストン子爵が、青年アルフレードを連れてくる。彼は「1年前にあなたを見て以来ずっと恋している」と真摯にヴィオレッタに告白するのだった。ひとりになったヴィオレッタは、今まで経験したことのない、心からの愛の告白に心ときめくが、たかが愛のために享楽的な人生は捨てられない、と我に返る。

【第2幕】アルフレードとの愛を選んだヴィオレッタは、パリ郊外の田舎で彼と静かに暮らしているが、生活費のため全財産を競売にかけようとしていた。それを知ったアルフレードは競売を止めさせようとパリへ向かう。すれ違いでヴィオレッタが帰宅すると、家にはアルフレードの父ジェルモンが。アルフレードの妹の縁談を成立させるため、息子と別れるようジェルモンは頼む。今は彼との愛だけが生きる希望であるヴィオレッタは、はじめ拒むが承諾し、別れの手紙を書いて家を出る。事情を知らないアルフレードは手紙に愕然とし、父が「一緒に故郷に戻ろう」と慰めても聴く耳をもたない。アルフレードは怒りが収まらず、夜会の大勢の客の前でヴィオレッタを罵倒する。彼女は絶望に打ちのめされる。

【第3幕】1ヵ月後。死の床に伏しているヴィオレッタ。そこに、父ジェルモンからすべてを聞いたアルフレードが来て、許しを乞い、パリを離れて一緒に暮らそうと語る。ヴィオレッタは愛する人に囲まれ息絶える。

https://www.nntt.jac.go.jp/opera/latraviata/ より引用(2024.06.13取得)

 私はこういう作品にスタンディングオベーションをしたいんだ、と、カーテンコールで拍手をしながら考えた。とはいえ、オペラはスタオベ文化ではないようなので、そこは空気を読んで座っていた。
 身分違い(釣り合わない立場)、すれ違い、純愛、最後は悲恋と、やっていることは結構古典的な要素のオンパレードだが、何故だか素直にストンと心に入ってきた。2幕1場は初見だと何が何を指しているか掴みきれなかったが、分かってから見るとあまりに古典的すれ違いで笑ってしまう。
 あとこれはド素人の感想になるが(いや全てド素人の感想だが)、一般人が想像するオペラのイメージに近い雰囲気だったのも満足だった。

 舞台装置による、静と動の対比?切り替え?が心地よかった。オープニングは墓標の映像から神妙に入り、幕が開くとサロンでの大勢によるパーティー、鏡面の床のおかげで華やかさが3割増し。逆に、登場人物たちの内面に迫るようなシーンでは、舞台上に余計な物が置いていないことで人物に集中できる。
 何より3幕の紗幕。俗世から切り離そうとするかのようなあの幕のせいで、ヴィオレッタとアルフレードがどれだけ愛を歌っても悲劇にしかならない。紗幕1枚なのに、あそこまであからさまに見え方が"分かりやすく"なるのは、いっそ怖いくらいだ。

 私はどうしても演劇の延長線上で見てしまうので、今までオペラを"音楽"として捉えるのがなかなか難しかった。今回初めて2階後方というある程度距離のある位置から見て、歌と音楽で枠組みが出来上がっていて、視覚的な効果はそこに乗っかっているような印象を受けた。やっと、オペラは音楽だというのが少し理解できたような気がした。
 音楽的な良し悪しは全く分からないが、中村恵理さんのヴィオレッタは確かに評判通りでとても好きだった。上手であることをこちらに意識させず、それでいて自然と集中して聞いてしまうような歌声だと思った。

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