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【観劇記録】東京喜劇 熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第10回記念公演 スマイル フォーエバー ~ちょいワル淑女と愛の魔法~

2024.06.16 @ 新橋演舞場

 新橋演舞場、幕間の過ごし方はもっぱら蕎麦屋。年2ペースくらいだと毎回、ではないがじわじわ値上がりしていて物価高が世知辛い(笑)。お弁当に切り替えて少しでも節約したいとは思いつつ、腰を落ち着ける場所が確保できるメリットが手放せない……。

白昼の都内某所で銀行強盗事件が発生!偶然現場に居合わせてしまったパーティーが大好きな都知事(松下)と彼女の娘。動揺した犯人は銃を発砲!なぜか銃弾は銃口の先にはいなかった孤独な老人(伊東)の足の指に命中する。この事件を捜査するのは、キャリア組の敏腕刑事(東・深沢)と、定年後再雇用された刑事(石井)の凸凹コンビ。彼らは銃弾が不可思議な軌道で老人に命中していることに気づくが、捜査は暗礁に乗り上げる。
この不可思議な事件には、老人の秘密が大きく関係していた。実は彼、魔法使いだったのだ。この事件を機に、より高度な魔法を習得する為、老人は魔法魔術学校の夜間部に入学する。しかし、共に学校生活を過ごすメンツは癖が強い奴ばかり。新ネタに行き詰まり、魔法の力を借りようとしている姑息なマジシャン(渡辺)や、何十年も卒業が出来ずに夜間に編入してきた落ちこぼれ(小倉)。魔法の力で滑舌を良くしようとしているただの落語好き(昇太)。そして、昭和のスパルタ指導でつっこみまくる教師(三宅)。
やがて、孤独な老人の望みを知った生徒や教師たちは、彼のために一致団結し…。
魔法の世界にありがちな"暗黒"や"邪悪"とは無関係!ただただ爆笑!のみの東京喜劇。"ちょいワル淑女"とは?"愛の魔法"とは!?全く説明はないけれど観れば分かる!そして面白い!!

公演チラシより引用(チラシ出典:https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202406_atami/)(2024.07.24取得)

 熱海五郎一座は2年ぶり2回目。正直、演目としては前回より個人的にはハマらなかったけれど、円熟の芸ってこういうことだよね、と改めて感心しきりだった。後になって振り返ると「この内容で3時間やったの?」という気がしなくもないのだが(もう一展開くらいあってもいいはず)、実際は全然飽きなかった。
 手を変え品を変え繰り出される様々な笑いや、やりとりの絶妙な間合いがまさに喜劇。どこまでが演出でどこまでが咄嗟のアドリブなのか、と思うところも多々……いや、ほとんど演出なのだろう。客は手のひらの上で転がされている(笑)。

 やはり見どころは伊東四朗さん御年87歳。出で立ちなんかは年相応だなと思うところはあったが、何だかんだ出ずっぱりだったし、長台詞も普通にやるし、何より発する言葉の間がいちいち面白い。そういうところはもう呼吸のように身にしみついているのだと感じた。
 やりとりの途中でふと止まって、「あなたが止まると心配するんですよ!」とツッコミが入るのがお約束で、それに対して「ゆっくりやらせてくれよ……」とぼやくまでがワンセット。笑いは"こちらの予想を裏切ること"と"安心感"から生まれる、とどこかで聞いたことがあるが、こういうことなのだろう。

 あと個人的には松下由樹さんもよかった。老若男女に向けた喜劇で、明らかに実在人物のパロディな役どころで、求められているものを100%過不足なく出してくるのが一周回って見事だ。"予想通り"もぴったりハマるとここまで気持ちいいのか、というのは発見だった。
 もちろん一座のいつものメンバーも、いつもの持ち味を遺憾なく発揮していて安心して見られる。それにしても、レジェンドがいるので忘れそうになるが、年齢を考えると1幕終わりのアクションシーンは凄い……。

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