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47.80年代ジャズフュージョンの隠れた名盤!メンバー再構成後のWeather Reportによる『Procession』!

ここ数回80年代ロックについて見てきたが、では、ジャズのほうはどうだったのだろう。ということで今回ご紹介するのが、菊地成孔と大谷能生の「JAZZ DOMMUNISTERS」もDommune内の番組でお薦めしていた、天才ベーシストのジャコ・パストリアスが抜けた後で、どうなるのかと心配されていた時期に発表された新生「Weather Report」のアルバム『Procession』(1983年)です。さらに言えばドラムとパーカッションもメンバーが変わっています。

さて、80年代のロックを語る時に、「リズムマシーンとシンセの流行のために音が軽くなりロックがポップ化していった」といった旨のことを述べましたが、リズムマシーンはともかく、シンセのほうは、やはりジャズメンのほうがうまく使いこなせていたと言えます。日本でも例えばYMOなどは最初のころは「テクノ」という扱いよりも「フュージョン」という扱いだったと記憶しています。遡れば60年代末から電子化していったマイルスバンドがその道を切り開いたと言えるのですが、75年以降、そのボスであるマイルスが心身ともにボロボロになってその後数年間第一線を退いていた時期に、マイルス門下生たちが自分たちのバンドを作り始め、そこからフュージョン路線が盛り上がっていきます。キーボーディストのジョー・ザヴィヌル率いる「Weather Report」もその一つでした。つまりは「フュージョン」という形でジャズもある意味ポップ化していったのですが、、ロックがポップ化していったときほど「軽く」なることはなく、他ジャンルの良さをうまく取り入れ、見事に融合(フュージョン)することに成功したのでした。そしてその時の融合剤(材)こそが何を隠そうキーボード(=シンセ)だったのです。ハービー・ハンコックやチック・コリアの成功もそれを裏付けているでしょう。

と、前置きが長くなりましたが、この『Procession』と言うアルバム、その1曲目からフュージョンしています。前半はあくまでジャズなのですが、中盤から激しくロックになり、最後はまたジャズで締めます。2曲目と5曲目は、惜しまれつつも今年亡くなったウェイン・ショーターの作品で(5曲目はザヴィヌルとの共同名義)、ショーターの作品はいつの時代のものでもやはりショーターの作品です。泣きのトランペットがマイルスなら、泣きのサックスはウェインです。5曲目の方はもはやクラシックと言っていいほどの幽玄な世界を見せてくれます。

一方、先に述べた1曲目と3、4曲目がザヴィヌル作品で、巧みな融合(フュージョン)技術をこれでもかと見せつけてくれます。敢えて奇妙なシンセ音を使っているのですが、それが見事に音楽に溶け込んでいるところが凄い!ジャズ=フュージョンは基本的にボーカルのないインスト作品ですから、ある意味シンセのメロディがボーカル的な立ち位置を占めることができるのでしょう。それがボーカルあってこそのロックと違うところかもしれません(と言いながら4曲目はボーカル入りの曲だったりするところもまた凄い!)。そして最後6曲目が新参加のドラマー、オマー・ハキムの作品で、こちらはかなりロックを意識したものとなっています。

と、とにかくこのアルバム、80年代のジャズ=フュージョンの空気を味わうには最適のものでしょう。お薦めです!




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