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アマゾンプライムお薦めビデオ② 99:日本側こそが作るべき映画『金子文子と朴烈』

今回お薦めするアマゾンプライムビデオはこちら、事実をもとに作られた韓国映画『金子文子と朴烈』(「朴烈」はパクヨルと読む)です。

どれだけ多くの日本人がこの二人のことを知っているか。恐らく多くの人は知らないでしょう(というか私も映画館で予告編を見て気になって調べてみて知ったのが最初です)。ちなみにとある映画祭で日本で最初に公開された時のタイトルは『朴烈 植民地からのアナキスト』だったそうですが、日本での本格公開にあたり「金子文子」の名前を最初に持ってきたのは大正解です。そうすることによって、これは日本でかつて実際にあった話ですよ、というメッセージがより分かりやすく伝わるからです。また、確かに金子文子も朴烈もいわゆるアナキストとして紹介される人物でしょうが、当時の日本の政治が、ある意味では形だけだったかもしれませんが天皇を中心に回っていたことを考えると、二人の政治思想はアナキスト(無政府主義者)というよりは反天皇制と言うべきでしょう。となると確かに今でも日本では扱いにくいテーマではあります。だからこそ韓国映画であることにある意味助けられるのですが、象徴天皇制となった戦後生まれの天皇が天皇となった今の時代であれば、例えこの映画が日本で作られたとなっても、目くじらを立てる人はもういないのではないでしょうか(というかむしろ目くじらを立てた人の方が白い目で見られるのではないでしょうか)。日本人の俳優さんも何名か出演されていますが(さりげなく松田洋二さんも出演されています)、この映画はやはり日本側こそが作るべきだったでしょう。あるいは、この映画でも、いろいろなところには配慮し、政治的なバランスはうまく取っているので、日韓合作という形でもよかったかもしれません。そこだけが残念な(というか悔しい)ところですが、あとはとにかく、内容的にも演出的にも、とても素晴らしい映画でした。

まあ、とにかく映画を見てもらいのでこの二人や映画自体については敢えてこれ以上は触れませんが、しかし、この映画の魅力はそのような政治信条的なことはさておき、テーマとしては重いものがあるにもかかわらず、それをある意味ユーモアも交えながら(そこも「バランス」の一つなのでしょうが)描いているところにあります。とにかく金子文子を演じたチェ・ヒソが、とてつもなくチャーミングで、その魅力にやられます。いろいろな意味で強い女性ではあるのですが、つらい時にこそ口角をキュッと上げてほほ笑むその笑顔にはもう、完全にノックアウトされます。この女優さん、不勉強ながらいままで存じ上げていませんでしたが、今後、もっともっと活躍の場を広げていくことでしょう。子供時代に日本に住んでいたそうで、日本語も堪能とのことで(事実、最初に映画を見たときには、金子文子役には日本人をキャスティングしたのかな、と思いました)、金子文子がそうだったように(というかそうありたかったように)、日韓(というかこの映画を見た後では、敢えて北も含めての朝鮮半島という意味で「日朝」と言ったほうがいいでしょう)の架け橋となってくれる可能性を秘めた女優さんです。

ということで、とにかくチェ・ヒソの魅力を楽しむだけでも十分に楽しめる映画です。お薦めです!



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