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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 104:井口昇監督と武田梨奈の魅力が爆発!『デッド寿司』

さて、今回お薦めするアマゾンプライムビデオは、ある意味究極のバカ映画といっていい、井口昇監督、武田梨奈主演の『デッド寿司』(2013)です。傑作『惡の華』で正統派映画もきちんと撮れることを証明してくれた井口監督ですが、この時代はまだいわゆる「バカ映画」の監督として知られていました。一方の武田梨奈は2009年の『ハイキック・ガール!』でデビュー以来、その童顔とその本格的な空手アクションが受けて、いわゆるアクション路線でやってきました。しかし、ここに来てのコメディー(しかもラブコメのような決してかわいらしいコメディーではなく下品さ丸出しのコメディー)挑戦は、ある意味で彼女にとっても大きなターニングポイントとなったと言っていいでしょう。アクションができるし、お笑いもできる、これ以上の強みはありません。これがその後のドラマ『ワカコ酒』シリーズへの主演ともつながっていきます。そこでの彼女はもはやアクションを売りにしているわけでもなく、お笑い要素を売りにしているわけでもありません。まさに自然体です。そしてその自然体で見るものを引き付けています。そしてその自然体の背後には、本格アクションもできるし本格?コメディーもできるという裏付けがあるのです。そう、それだからこそ、今の武田梨奈はまさに女優なのです。

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さらにはこの映画、井口昇監督作品のもう一人の主役とも言える亜紗美氏も、恐ろしいほどの存在感を放つ怪演を見せてくれます。今は芸能界を引退してしまったようですが、もったいない。井口監督作品だけでもいいので、今後も出演を続けてほしいものです。この人であれば、いくつになってもその年齢なりの怪演を見せてくれることでしょう。

と、ここまで来れば、松崎しげると津田寛治といった男性陣にも触れずにはいられないでしょう。なんで松崎しげる?と思う人もいるかもしれませんが、我々にとってはあの「トミーとマツ」の「マツ」こと松崎しげるです。単なる歌がうまい人ではありません。歌がうまい人なのだから歌がうまい人で十分にやっていけるのに、この人は敢えてそうしません。武田梨奈が女優として幅広いように、松崎しげる氏は人間として幅広いのです。そして津田寛治氏。この人が俳優として幅広いのはもはや言うまでもないでしょう。シリアスな役からぶっ飛んだ役まで何でもこなせます。特に今回の見どころは「日本のキスの伝統」というセリフにもあるように、伊丹十三監督の名作『タンポポ』へのオマージュとも言える亜紗美氏とのキスシーンです。そしてそのキスシーンを見て、我々はこの映画の裏に潜むあるテーマに気づかされます。それは「生々しさ」です。そう、寿司は基本的に生魚なのです。ついこの間まで生きて動いていたものが、シャリの上に載せられ食事として、それも高級な食事として提供されるのです。「命をいただく」という言葉がありますが、まさに食事とは生きるためにほかの生き物の命をいただくという行為なのです。

と書きましたが、実は、そこまで考える必要は、全くないのが、というか考えさせないのがこの映画の魅力でもあります。とにかくバカさ加減とやりすぎさ加減を楽しむ。それがこの映画です。お薦めです。


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