【怪盗あだむの恋】
【怪盗あだむの恋】
この僕が…。ありとあらゆるものをあっさり盗んできたこの僕が…。ココロを盗まれてしまうなんて…。
それも、たまたま街でぶつかって、落とし物を拾ってあげただけなのに。
あの、甘く爽やかな香りと、
美しいロングの黒髪。
そして、揺れるシンプルなイヤリング。美人とかわいいが同居したような…。そんな女性(ひと)。
男なら、虜にならないハズがない。そして、フリーなはずがない。
そう思いながらも、1%でも可能性があるなら、僕はあきらめない。
だって僕は盗むのはプロだから。
僕の甘いマスクとイケボで、
彼女のココロを盗んでみせる。
たとえ、いま、彼氏がいたとしても。その彼を捨てて僕のところに来たくなるぐらい惚れさせてみせる。
そこで、僕は考えた。
彼女を虜にするには、彼女にふさわしい知的で頼りがいがあり、優しく誠実な男でなくてはならない。
そして、ハッキリと僕からは、
あなたに惹かれているとは、言わない。彼女が焦れて、アプローチしてくるのを待つ。
そして、ふたりは、恋人となり、世界中のどのカップルよりも愛し合い、幸せなふたりとなる。
しかし、そのためには、
まずは、彼女と友達となり、
僕という人間を知ってもらう必要がある。
怪盗あだむの僕だけでなく、素の僕も。
だけど、僕はシャイだから、
友達になってくださいというのもかなり勇気がいる。
そこで、僕はとあるアプリに怪盗あだむで登録し、
多くの人へのメッセージのように思わせながらも、実は彼女宛へのメッセージというものを毎日17時から配信している。
我ながらまどろっこしいと思いながらも、これ以上の勇気が出ない。そんな片恋を続け、1ヶ月が経った頃、彼女と思われるアイコンの女性が来た。
そして、100番目のファンになってくれた。
それが、うれしくて、コメントでやり取りしてみたら、
益々彼女では?と思えてきた。
そこで、思い切ってもし、よければTwitter教えてくれませんか?と訊ねたところ、あっさり
教えてくれた。
ヤバイ。嬉しすぎる。
今日は、寝れそうにない。
この恋、絶対に実らせてみせる。
彼女のココロを美しく盗んでみせる。
そうひとり、心に決めた。
そして、さっそくDMを送ってみた。
しかし、3日経っても彼女から返信がない。
なぜだろう…。
彼女の身になにかあったのだろうか?
それとも、嫉妬深い彼氏がいて、返信できないのだろうか?
なんにせよ。他にコンタクト取れる方法はない。
どうしよう。
ボクの心と頭は既に君のことで
いっぱい。だから、諦めるなんて出来ない。
こんな、上手に盗んで放置しないでほしい。
女は、星の数ほどいるけど、
ボクの太陽は、きみだけだから。
だから振り向いてほしいのに。
なんで、そんなにつめたいの?
あゝ。苦しい。カラダがバラバラにされるようだよ…。
お願いだ。ひとことでいい。
返信をしてくれ。
それが、ココロを盗んだきみの務めじゃないかな?
あゝ。今宵の月は、とても悲しく美しい。