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前を向くきっかけになった歌

#私の勝負曲 #緑黄色社会 #薬屋のひとりごと #アニメ主題歌

久々に良い意味で鳥肌が立った楽曲。
ここ1年で一番聴いたかもしれない。
2024年は心身ともに疲弊して、音楽への熱も冷めていた。
でも、この曲のおかげで保てたような気がする。
前を向けるようになった気がする。

この曲との出逢いは、もう1年以上前になる。
アマプラでアニメ「薬屋のひとりごと」第1期第1話を見た。
再生ボタンを押すと流れるのは、バスドラムとハンドクラップ。
そこからエレキに引っ張られるようにシンコペーションが聞こえると、
短いながらもインパクトがあり、ワクワク感がある前奏。
Aメロに進むとシンプルな伴奏の上で主旋律が歌われる。
声を聴いた瞬間、惚れた。
この声、良い。この歌、良い。
手元のスマホで調べた。
「薬屋のひとりごと 主題歌」
すると、「緑黄色社会」の文字。
ああ、リョクシャカか。
紅白で歌っているのを聞いたことがあるな、
CMソングもやっていたはずだな、
それくらいの知識しかない。
Spotifyでリョクシャカのほかの楽曲も聴いてみる。
そして、そのままハマってしまった。
とりあえずAmazonで《花になって》のシングルを購入した。

声で瞬時に惚れたのは、久しぶり。
あいみょん以来かな。
力強いのだが、どこか繊細で、
ウィスパーも、声を抜くことも上手い。
とにかく表現の幅が広い。
長屋さんの声、めちゃくちゃ良い。
歌い方がとても好き。

アレンジも秀逸だ。
ドラムの使い方、ピアノのアレンジ等々。
楽器の使い方、音の増やし方減らし方、
余すことなくバンドのいいところを全部聞かせてくれるような
見事なアレンジ。
曲終わりのユニゾンも良い。

転調の仕方も面白い。
この曲ではB♭ minorとG minorを行き来するわけだが、
一瞬D minorを経由する(D minor=G minorのIV調)。
Bメロの後半の転調(経過)直前でB♭mの同主音調かつDmのVI調である
B♭の和音を聞かせている。
その時のメロディはDmおよびGmのスケールにもある「D」音。
B♭mの性格を決定付けるのは「D♭」の音であるから、
メロディとコードで半音上の「D」音への変化を出したこの段階で
Dm、その後のGmへの転調をに確実なものにしている。
その後のEm7-5→A7→DmでII7→V7→Iという基本的なコード進行を取り、
Dm→A/C♯→C→Am7-5の流れの最後で
Am7-5(=GmのII度)を聞かせることでGmへの転調を確定させ、
Am7-5とV度であるD7をそれぞれ長めに聞かせて
焦らしに焦らしてサビ。
あのわずかの間で少し遠回りをしつつも丁寧に転調への流れがあり、
しっかり焦らしもするものだからサビが余計に映えてくる。

続くサビもあえてのIV度・Cmスタートなのが良い裏切り。
この曲全体にも言えるが、
V→Iのクラシックでいう完全終止形(お辞儀のピアノを浮かべてほしい)と
それ以外の終止形の使い分けが面白い。
ここぞという時以外は完全終止を使わないことで進行のメリハリが出る。
それ以外の場合でも、
半音階で攻めることで完全終止以上の効果を出しているところもある。
なかなか攻めたロックテイストの中にもどこか安定感があるのは、
偶に出てくる完全終止でしっかり緊張から緩和されるからだろう。

そんなこんなでよくできたメロディとアレンジである。
当然メロディとアレンジが良ければ耳馴染みが良いわけで、
パッと聴いて好きになれるわけだが、これは「アニメの主題歌」。
歌詞もとても重要なポイントだ。
以前のタイアップによるアニメ主題歌は、
ただ「タイアップしただけ」という感を受けるものもあったが、
昨今のアニメ主題歌はタイアップであっても、
世界観に相当忠実なものが増えていると感じている。

その点を踏まえて、届いたCDの歌詞カードをじっくりと読む。
配信全盛の昨今ではあるが、
歌詞を読むならCDを買ってブックレットを開くに限るのだ。
作詞も長屋さんだという。
「薬屋のひとりごと」は原作を読んでいたので、
世界観にどんぴしゃりな歌詞に感動した。
おそらく壬氏の目線。
小説でしか描かれていないところまでも踏まえているのでは?
と思うほど。
最新刊まで追ったうえで改めて聴くとますます納得。

と、このように久々にがっつりハマったので、
そこからそれはもう何度も聴き続けた。
アニメのオープニングも飛ばすことなく、毎回聴いていた。
聴いているうちに歌いたくなるのは歌好きの性だろう。
歌ってみると、なかなか強敵ではないか。
サビの後半部分や2番でメロディラインが変化するところ。
難しいが同時にめちゃくちゃカッコいいところでもある。
そして、とびきり感情を歌に込めやすいところ。
コードを確認しながらピアノで弾き歌いしてみる。
地道に何度も繰り返し、何とかまともに歌えるようになったころには、
ますますこの曲が好きになっている自分がいた。

言葉も音符も書く人間でありながら、
ここ数年離れていた私。
いつの間にか、音楽そのものへの関心も下がっていたように感じる。
《花になって》を聴いて、ハマって、弾いて、歌って、
もう一度自分で書いてみようと思い立った。
歌詞も、曲も、このようなエッセイも。
表現したい、そういう想いがふつふつとわいてきた。

音楽や表現活動への情熱を思い出させてくれたこの曲を、
今日も聴きながら、文章と音符を書いている。

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