僕は東京をやり直そうと思う。
仕事帰りの電車の中で、Youtubeからプッシュ通知が来る。今話題の『THE FIRST TAKE』にYUIが出る、と知った。
さっそくスマホを手にしてアクセスしてみる。
「CHE.R.RY」がヒットしたのはもう十年以上前のことだ。だから、歌詞の中に出て来る
指先で送る君へのメッセージ
という描写は、スマホのディスプレイをフリックすることではなく、所謂ガラケーのボタンを押してメールを送ることなんだろう。
ところでこの動画では2曲を歌っているのだけれど、最初に歌う
「TOKYO」
という歌の方に惹かれた。あぐらをかいてギターを抱え、眉間に皺を寄せて歌う表情。
答えを探すのはもうやめた 間違いだらけでいい
彼女は確か福岡の出身、デビュー以降、東京に拠点を移したと記憶している。小さな町から中くらいの街へ、そして東京へ。この街で暮らすと、生きるための羅針盤が狂う。コンパスの針は回転を繰り返して一つところに留まることを知らない。
やがて、自分が何故東京で暮らすのかという意義や意味や動機を見失う。
でも、それでもここで暮らさなくては触れられないモノ、聞こえない歌、観れない映画や音楽があるのも事実、とっくに実家で過ごした年月を追い越してしまった筋金入りの「上京組」としては、ここから離れることの恐怖には耐えられない気もする。それでも、他の街とは違って、
東京は、問う。
お前は何者なんだ。何をしているんだ。それに意味はあるのか。それは正しい答えなのか。
わからない。全てのこの街の問いかけに答えられない自分がいる、ただ。
ただ、ちょっとだけ疲れてしまった。果ててしまった。重荷を背負うだけの力がなくなりつつある。だから、もう一度、とYUIの歌声を聴きながら思った
もう一度東京をやり直そう。
それがどんな変化をもたらすのかはわからないけれど、答えや正解を探すのはやめた。そう、彼女が「TOKYO」で歌っているように。
もう一度、東京をやり直そう。
※同じ福岡が輩出した鬼才、向井秀徳の歌う「CHE.R.RY」もまた趣きがあって良い。
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