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憲法9条改正と緊急事態条項の追加にはどういう意図があるのか?2019参院選後にはいよいよ改憲か?

参院選の直前の土曜日、2019年7月20日に公開されたビデオニュースドットコムの番組よりお送りします。

どうやら選挙で安倍総理が憲法改正を明言し、改選後も改憲勢力が2/3を維持することになると次の国会ではいよいよ憲法改正の議論がなされそうな流れとなりそうです。
憲法改正はそれ自体が危険な匂いがするということで反対している党もありますが、改正の内容によっては議論はしても良いという党もあります。戦後に1度も変えていないことや、他の国では憲法改正は行われていると聞くと悪いものでもないかなと思う国民も多そうです。

ただ、そうなってくるとやっぱり自民党がどういう意図で改正案を出そうとしているのか、その表と裏の意図を知りたくなりますね。

さて、このテーマについても素人なのでミスリードあるかもしれませんが、関係者の方はご指摘いただければありがたいです。私はただのおじさんですので皆さんも優しくしてくれることが重要だと思います。

1. はじめにこの6年の自民党の公約と、実現されたかどうかのおさらい

安倍政権が誕生したのが2012年12月、その後の初めての国政選挙が2013参院選でした。この6年間を見ることで安倍政権がどういう方向性を持って政権運営をしてきたかがわかります。

まず最初に目につくのは、赤い部分でこれらは強行採決をした法案です。

強行採決(きょうこうさいけつ)とは国会などで与野党による採決の合意が得られず、少数派の議員が審議の継続を求めている状況で、多数派の議員が審議を打ち切り、委員長や議長が採決を行うことである。
wikipedia 強行採決

特定秘密保護法、安保法制、共謀罪、反対が強かったものが安倍政権では強行採決で通っています。

木村草太さん曰く、強行採決をすることで支持率が下がらなくなったことを指摘しています。
安倍政権より前の政権では、発足時に国民の期待度が高く、だんだんと支持率が下がっていき支持率が下がったところで退陣するという流れがありました。ただ、2012年からの第二次安倍政権については、前の政権が民主党だったこともあるからか最初から期待値低く、そのため急激に支持率が下がらないという特徴があるそうです。

2. 改憲について ①憲法9条

長く議論されてきた、憲法9条の改正について安倍総理は言及しています。安倍総理は「自衛隊」を憲法に書き込むことを公言していますが、その背景や意義、実現性はどうなのでしょうか?

ちなみに木村草太さんは憲法学者です。一部の右寄りの人たちからは否定されたりしているようですが、非常に論理的で端的な議論をしてくれるのでわかりやすい方です。

安倍総理の発言を憲法学者が読み解くとこうなる

木村草太さん曰く、安倍総理が憲法9条に自衛隊を書き込むというアイデアはそれほど深く考えこまれたものではないようです。
まずは、現在の憲法9条の確認です。

日本国憲法第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行為は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

さて、安倍総理が強調しているのは「自衛隊に違憲を唱える憲法学者や政党がある。だからそれを説得するために改憲する必要がある」ということです。ただし、この論理にはまず大きな問題があるということです。

それは、安倍総理は自衛隊の最高指揮官にも関わらずその人が「改憲しないと説得できないくらい自衛隊に違憲の疑いがあります」と言っているということになります。そんなことを言っていいのか?というのが憲法学者としてはツッコミどころのようです。

自民党の改憲の目的

それでは安倍総理が言い出してしまった憲法9条の改憲を、自民党としてはどのように進めようとしているのかを見ていきましょう。

自民党改憲条文案
第9条の2
(1) 前項の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを防げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
(2) 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
(※第9条全体を維持した上で、その次に追加)

なかなか素人には、どういう意図なのかわかりずらいですね。
木村草太さんの解説では、自民党的にもなかなか苦しいようです。どのあたりが苦しいかというと、自衛隊だけを憲法に書くことは難しくないが、先の国会で安保法制が成立してしまったために「集団的自衛権」についても一緒に書かざるを得ない、つまりこれまでの「専守防衛」の枠を超えた書き方をするのが非常に困難であるということでした。

まとめるとこんな感じですね。
・現時点で憲法9条に自衛隊を書き込もうとすると、先の国会で成立した「集団的自衛権」についての記述も入れなければならない
・「集団的自衛権」には従来の「専守防衛」の範囲を超える内容が含まれる
・ただし「専守防衛」を覆すような記述を入れれば紛糾するのは目に見えているため、「集団的自衛権」に関する記述をバレないように入れる必要がある

自民党改憲条文案の中では、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを防げず」の部分が、日本が攻撃を受けている、という限定ではなく、日本の平和を守るためであれば武力を使っていい、という拡大解釈が可能な書き方をしていることがポイントのようです。
憲法の文面というのはそんな風にできているのですね・・・

3. 緊急事態条項の自民党案の問題

もう一つ、自民党から憲法に盛り込むべきと出ているのが緊急事態条項です。
これにも問題があると指摘しています。

緊急事態条項
第73条の2
(第1項) 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の規制を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。。
(第2項) 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
(※内閣の事務を定める第73条の次に追加)
第64条の2
大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議員の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
(※国会の章の末尾に特例規定として追加)

プレビュー動画内では、この自民党案についての詳細の指摘は無かったのですが、2012年に自民党が出してきた草案について危険性を指摘しています。

2012年の自民党の緊急事態条項の内容には、「緊急時に政府は法律と同等の権限を持つ政令を制定できる」という条文が入っているそうです。これを政府ができるとどうなるかというと、既存の法律を無効にすることができるという意味になるのだそうです。
確かに、政府が国会を通さず法律と同等のものを制定できるのですから、そうですよね。動画内でも極端な話どんなことができるかを木村草太さんが指摘しています。
・内閣の判断だけで法律を書き換えられる。
・通貨を変えられる
・国会の会期だって変えられる
・裁判所に訴えるための訴訟法も変えられる
・放送法を変えられる
確かにこれはあまりにも強力すぎる内容ですね。

ちなみに現在の自民党草案では、こういった内容はあまりにも過激すぎるということで削除はされているようです。ただし、木村草太さんとしては「2012年の危険な草案から危ない部分を抜いて行ったら、現在の法律と変わらないような内容になり制定の意味を失っている。」と表現し、逆に意味の無い改憲なので不要ということになるようです。

この動画のまとめ

いよいよ今日が2019参院選の投票日です。一応安倍総理は憲法改正についても公言するようになりましたが、結局選挙戦では経済や雇用についての議論が多いようです。
争点というのは各党や政治家が決めることではなく、有権者が自分で決めるべきものですので、憲法改正について危機感がある方はそういう争点で各党を比較することも重要だと思います。
憲法が変わってしまえば、法律も変わることになりますし、それが経済にももちろん影響してきます。

さて最後に、今回も宮台先生が冒頭に指摘していることで締めたいと思います。

貧すれば鈍す

若者の投票率が低いことや、若者ほど現政権支持になるという現象がありますが、それは生活が苦しすぎて余裕が無く、政治に関する情報に触れられなくなるということが背景にあると言います。つまり、貧すれば鈍す。これは国民としてはしょうがないことです。つまり、政府が国民の生活を苦しめれば苦しめるほど、日本人というのは現政権を支持するような国民性であることを指摘しています。


そんなわけで、一応解説はしたものの私の解説ではよくわからないという方や内容をもっとよく知りたい方はビデオニュースドットコムをご覧くださいませ。(投げやり)

プレビュー動画はこちらです。


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