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キミの世界線にうつりこむ君 第三章

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第三章をまとめています(星崎碧編)
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2023年11月の記事一覧

連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第三十八話 “性別“じゃないキミ

連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第三十八話 “性別“じゃないキミ

校舎がオレンジ色に染まっていくなか、生徒会室ではみんなが揃っている。
その後ろには片山先生も静かに見守っている。
一人一人を見渡しながら、ふーっと深く息を吐いてから星崎が口を開く。

「わたしは、どっちかに決められない。いや、決めたくないの。

男性でも女性でもどっちでもあるのがわたしだって思ってる。それでも、みんなと関わっていくなかでいつも“性別“の問題にぶつかる。
その度にわたしはどっちかを選

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連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第三十七話 弱さと覚悟

連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第三十七話 弱さと覚悟

 待合室のベンチで、うなだれている蓮。

「あの、もしかして星崎さんのお兄さんですか」
片山先生が声をかける。

「あっ、そうです。えっと、どなたですか」
目の前にいる人物をじっと見つめる。

「はじめまして。水標中学で理科を担当している片山はじめと申します。先ほど、碧さんの方お見舞いに伺わせていただきました」
丁寧に自己紹介する。

「あ、先生でしたか。いつも碧がお世話になっています。碧の兄の蓮

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連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第三十六話 後悔

連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第三十六話 後悔

 衝撃的な事件から一夜明け、職員室では職員朝礼が行われていた。
それぞれが連絡事項を挙げていき、最後に青野先生が挙手する。

「星崎碧さんですが、幸い命は取り留め、現在は入院中です。復帰は来週になる予定ですので、よろしくお願いします」
報告を済ませ、職員朝礼は終わりとなった。
それと同時に片山先生が青野先生に駆け寄り、

「星崎さん、大丈夫ですか?」
星崎の様子を尋ねる。

「ええ、昨日の昼過ぎに

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連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第三十五話 隣にいる君

連載小説『キミの世界線にうつりこむ君』第三十五話 隣にいる君

「わたしは、どっちにもなれない。
可笑しいですよね。世界ははっきり決まっているのにわたしはそれにすら染まれない・・・」

意を決して本音を少しずつ漏らしていく碧。

「それは『ロミオとジュリエット』でも同じだったんだな」

耳を傾ける青野先生の言葉に

「そうですね。吹奏楽部のみんなはロミオ役、生徒会はジュリエット役。どっちかを選ばなきゃいけない、ならなきゃいけない。
そう考えたらわたしってなんな

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