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おどろおどろしさが美しさを携えて

 やっぱり言葉にしたくなる衝動に駆られる。なのでやっぱり書いてみることにした。

 なのに言葉に書き出そうとすると、手がかりというのか、言葉にしたいものの実態というか、そのあたりのものがなかなか掴めなくて、うゔぅ〜となる。無理に言語化しなくていいじゃないとも思うのだけど、気になって仕方なくて。感想を書くことは苦手意識があるのだけど、JIDAIさんの舞台に関しては何か違っていて。

 私を動かした"何か"はJIDAIさんの舞台には確かにあったのだけど、わかりやすく"○○に感動した!"みたいに言葉にできるものでもどうもなくて、でもそれが何なのか知りたくなってしまうから困ってしまう。ふわふわとあの時の感覚というか、世界というか、劇場の席にいてJIDAIさんの舞台を観ていた自分をありありとなぜか思い出せるのに言葉にならないので、とりあえず書き始めてみます。

http://www.theaterx.jp/24/240315-240315p.php
2024年3月15日にシアターX(カイ)で"『MIMICROSCOPE マイミクロスコープ』夜のアートマイム劇場 第二十九夜"を体験して、なぜこんなにも気になるのかが気になって、そしたら後日同じ会場で舞台を見ていた方にばったり会い、自分の中をやっぱり探ってみることに。

 何度見てもJIDAIさんの表現が気になっている今なのだけど、初めはうっかり観に行った私。何度か彼の舞台を観ていた方が「ご一緒しませんか?」と誘ってくださって、初めて足を運んだのが2020年11月23日の"『MIMICROSCOPE マイミクロスコープ』夜のアートマイム劇場 第二十二夜"。その時は、なんだか少し怖いと思う自分が出てきて、でも不思議な心地よさが残って、うわぁなんだこりゃと思ったんです。

 それでも続けて6作品も観に行っているのは、毎回違う作品だし、JIDAIさんの表現が気になるし、お得すぎるチケット代というのも重なっているから。さらに舞台後のアフターミーティング、そのまたアフターのミーティングを開いてくださる方々もいて、JIDAIさんも交えて舞台の感想などをシェアし合える場に出会えているのも面白くて、それもまた行きたくなる理由。

 けれど、今回気づいたのは、私はJIDAIさんが演じるマイム…いや動く様子や表情…その他全体を観ることで、自分の中から出てくる言葉に出会いたい、どんな自分に出会えるのかが気になる、だからまた観たくなっているのだということ。JIDAIさんの舞台を観ると私の中に現れる「気づいてよ」「出てきたいよ」と頭をノックしてくる小人さんがいて、その声を聞きたいと思うのが見に行く理由、と表現してみると何かしっくりする。

 自分の中の何かおどろおどろしい部分が、ちょっとした美しさを携えて顔を出せる隙間というか、うっかり出てきでも大丈夫なステージをJIDAIさんは作ってくれてるような気がする。演者を見ることで、安心して自分の中のおどろおどろしさに出会えるなんて、なんだか変なのだけど、そんな体験を他でしたことがない。

 で、やっと今回の感想。今回は2作品あって、1作品目『真価論』のシーンが頭の中をぐるぐるし続けている。2作品目はなぜかほぼ記憶にない。いつも何かくるくると巡るようなイメージが作品の中にあるなと感じているのだけど、記憶がぐるぐる巡るのは初めてかも。

 くるくると巡っていく舞台上のJIDAIさんが、"何かを跨ぎ、潜り抜け、外に出ていくような、中に入っていくような"様子を目で追っていたら、何か一瞬身構えてしまうな怖さと重さを胸に感じたんです。

"あぁっ!やめてほしい、この先にある何か嫌な感じがあるよね、だから行かないで、見たくない、そこまでして入っていかなくていいよ!"

言葉にするとそんな感じがなぜかして、身体の中がぎゅーっと圧縮されるような感じになりふるふる震え、涙がつーっと流れてきたんです。感情があったかどうかもわからないのだけど、何か怖さに似た感じだったかな。

 そんな私の目の前で引き続きJIDAIさんは舞台の上でくるくるとペルソナを変えて演じていて、それは私の言葉で表現するなら、肉食動物を狩る人、何かをサーブする人、それを食べる人、そして何かを跨いで進む人、それが繰り返し現れては変化していく。その人たちが、同じなのか違うのかそれさえも曖昧なのだけど、どんどんと中に深く入っていく感じがして、変化しない終始スンとしたペルソナと、だんだんと変化してガツガツと醜くなるペルソナがいる、そんな感じ。なんとなく何かに飢えていく人のようで、繰り返すほどに虚しくなっていくようで、何か自分自身の身体の中を食べて苦しんでいく人のようでもあって、それを感情なく見つめている人も同時にいて。怖くて悲しいのだけど、気持ちは高揚してきて"そうだよね!"とも"ガルルゥゥ"と思う自分も出てきて、なんだかやっぱり不思議で、なんなんだろうなぁと気になってぐるぐるするのでした。

 2作目『⦿』は、農耕とか微生物、綱渡り、最後は炎のような蝶のような。そしてなぜかほとんど記憶にない…。でも一つ確かなのは、JIDAIさんのあの骨格の動きは身体の中の栄養になっている気がするということ。

 こうやって言葉に出したくなってしまうのは、なんだこれ?!と好奇心が湧いてくるからでもあって、なにか怖さをのようなもの手放したいからでもあるなぁというところに辿り着けました。

次回は12/13だそう、楽しみ。

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