名曲プレイバック 第5回 LOVEマシーン

唄: モーニング娘。

作詞: つんく   作曲: つんく   編曲: ダンス☆マン

1999年(平成11年) zetima(アップフロントワークス)

 ノストラダムスの大予言が不発に終わったこの世紀末の忘年会は、どこもかしこも「wow wow wow wow」と手を振り、腰を振り、歌い踊るサラリーマンで溢れていただろう。それくらいこの曲は老若男女問わず大きなムーブメントを起こした。かつてのピンク・レディーの《UFO》に日本中が熱狂したように。

 世紀末とは不思議なもので、時代が動く。世界に目を向ければ米ソの冷戦に終止符が打たれ、その象徴であったベルリンの壁は崩壊し、東西ドイツは統一された。そして社会主義の旗振り役であったソビエト連邦も終わりを迎えた。日本においては昭和天皇の崩御で長く続いた昭和に幕が降り、平成が始まった。消費税も始まった。バブルが崩壊し不況がやってきた。長野オリンピックが行われ、それに合わせて新幹線が整備された。そして日本ではやたらと騒がれたノストラダムス。不思議なものである。恐怖の大王が降りてきて世界を破滅させるという予言を信じる人が続出した。あるいは信じたかった人が続出した。華やかなバブルが終わり、長く厳しい不況の時代に突入したことも関係あるのだろう。2000年の足音が聞こえてきて、ミレニアムに浮かれる人が出てくると同時に、2000年問題なるものも浮上して、慌ただしく動く人もいた。

 そんな日本に底抜けに明るく、誰もが歌える歌が登場した。それがモーニング娘。の《LOVEマシーン》だった。詩の内容も明るい。まさに日本の応援歌。でもいうほど応援歌らしくない。だからよかった。真正面からがんばれ、がんばれではなかった。「明るい未来に就職希望」「日本の未来は世界がうらやむ」。夢のような言葉にも思えるが、押しつけの「がんばれ」とは違う背中の押し方をしてくれる。みんなでスクラム組むような一体感を生んでくれる。「みんなでがんばっていきましょうよ」そんなメッセージさえ感ずる。この歌の前では上司も部下もない。みんなで肩組んで、みんなで振り付けして、みんなで歌って。この時代はこの歌を求めていた。この歌がどうしても必要だった。

 それを歌うモーニング娘。にものすごいスターがいた。後藤真希である。彗星のごとく現れた13歳の金髪少女。モー娘。最大のヒット曲は彼女のデビュー曲だった。世紀末に現れた少女。日本に舞い降りたのは世界を破滅に向わせる恐怖の大王ではなく、日本を救う天使だったのかもしれない。

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