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親の借金との戦いに、負ける気がしない

父の死にしんみりしたのは、ほんの2週間だけ。

今は、「くそオヤジ!」と叫んでいる。

それは、父名義の負債が発覚したから。

その借金は、父が30年前に家を建てている間に海外旅行にいったときの費用。家族全員が行ったのではない、父一人1ヶ月の海外旅行だ。その借金を30年以上も「利子だけ」を払ってきたことが今露呈したのだ。

この30年もの間、父は収入の一部をその返済に廻さず、骨董品や音響機器、車などを購入。そして、住宅ローンの返済には、姉や兄、わたしから「お金がないんだ、助けてくれ」といって巻き上げたお金をつかったのだ。

また、固定資産税の滞納も発覚。住んでいる自治体とはすでに話はついており、分割払いにしてもらっているとはいうものの、滞納していることは事実。

さらには、母名義のクレジットカード分割払いが毎月10万円近く発生していることも判明。年金生活者だから2ヶ月に1回の収入にもかかわらず。

それだけならまだよかった。疑わしいのは、母の隠れた借金。母はかつてこっそりとサラ金業者からお金を借りていたことがあり、その借金を姉が泣く泣く全額返済したこともある。母に「借入金はないの」と聞いたところで素直には答えない。自分が怒られそうになるとすぐに嘘をつく。もちろん「嘘はついていない」というのは定番だ。今回も「ほんとにないの?」と呆れるぐらい聞いているが「私を信じられないのか」と怒鳴り、泣くだけだ。

いったい本当はいくら返済しなければならないのか、まったく検討がつかない。

さて、返済方法は?

「父が作った借金は父が返済すべき」それは私や姉、兄も同意。さらには恥を偲んで友人たちに相談してもみな同じ意見だ。

その方法は、最初に「父の遺品を売る」。

そのために「売るものリスト」を作ろうとすると、母は「おとうさんが頑張って買ってきたものをどうして売ってしまうの。あんまりだ」と、売ることを拒否。

じゃあどうやって返済するの?ときくと「がんばる。自分でなんとかする」と答えるだけ。なんの収入のあてもない人がどうやって返済をするのだ。そしてどうやって今後の生活をするのだろうか?

母の今までの「なんとかする」の方法はただひとつ。「子供に頼る」。母にとっては、子供に頼ることはまったく恥でもなんでもない。子供は金脈で、子供からお金を巻き上げるのはなんの苦でもない。

大体のパターンはこうだ。

朝起きると、母の機嫌が悪い。父が会社に行くために家をでると、とたんに「悪いんだけれどさぁ、お金ちょっと貸してくれない」と耳打ちしてくる。その言い訳は、「生命保険を解約しなければいけない」「おとうさんの入院費が払えない」「電気代が止められる」。そういう言葉を、朝会社や学校に行く前に姉、兄、わたしの誰かに言う。そうすると、子は罪悪感から抜けられない。

「今払わなかったら、家族に大変なことになる」

そう思い込んで、学校や会社に行く前に銀行のATMにいってしまうのだ。

母にとっては、お金を手にしてしまえばこっちのもの。「悪いわね、いつも」といってケロッと忘れる。子供に返済することも、ましてや積み重なった借金を返済することはない。

「かわいそうなわたし」を助けるのは子供の役目。そういう母の意を汲んで、姉も兄もわたしも「金づる」としての存在を甘んじて受け入れてしまってきた。なんどもなんども、母の呪縛から逃れようとしたのにできなかったのだ。

結婚をし、家庭をもっても同じこと。姉は子供の入学式の朝に催促の電話を母から受けたそうだ。それはまるで「あんたひとり幸せになるのは許さない」というように。

今回も同じだ。母は、「自分だけがこんな思いをするのは許さない。子供が私を助けるべきだ」と言っているように、父の持ち物を売ろうとしない。それで母自身の生活費が足りなくなったらまた子供に頼ればいいや、とくるのが目に見えている。

わたしは、昔から変わることのない母のその態度を見て決めた。

「父と母の借金は、父の遺品で返済する。父の不動産で返済する。そうしたら、わたしは母と決別できる」





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