良かった書物、映像、コントの備忘録【2021年9月】
九月に出会った良かったものを、忘れないために備忘録として残していきます。
タイトル的に本と映像とコントしか対象ではないですが、気分によって多種多様なものを記すつもりです。
「よつばと!」あずまきよひこ
ご存知、あずまきよひこ先生の名作漫画。
ジャンルとしてはほのぼの日常コメディといった様子で、読むとアヤナミレイのようにぽかぽかした気持ちになるはずだ。
趣味によって漫才やコントなどのお笑いを鑑賞することが多いのだが、そこで産出される「笑い」とは格段にベクトルの異なった笑みが溢れる。
ほっこりのみで成立しうる笑みで、ここまで心が和やかになるものはこれか昼下がりの紅茶くらいだと思う。
あと、私が良く読む鬱展開漫画を読了後に心を支配する「負の感情」を取っ払ってくれるほどの楽しい漫画なのもハマった一因だと思われる。
次巻発売はいつになるのであろうか…?14巻と15巻の間に2年半くらいのブランクがあったため、次巻はだいぶ先の機会になりそうである。
まあ、ストーリー性はほぼ皆無であり、展開が気になり過ぎて夜も眠れない…!みたいな暗示に陥ることは無さそうなのも良い点だ。
「ひらいて」綿矢りさ
綿矢りさの小説、結構好きだ。
特に本書のような、主人公の女の子の破天荒ぶりが物語の展開を左右していくシリーズが好みにどストライクだ。
こういった「思春期の暴走具合」が所々に散りばめられた小説を読むと、自分の青春時代と投影して共鳴する感情と「流石にそれはないだろ」と冷静に俯瞰するという相反する感情が生まれるため、脳内は中々面白い状態になる。
因みに「ひらいて」は冷静に俯瞰する方が多かったと感じる。やはり主人公の横暴さが起因しているだろうか。
そしてこの「ひらいて」は映画化するらしい。
読んだ後色々調べていたら気が付いたが、読後感は良かったので映画も見たい欲がもなくは無い。
「読んでいない本について堂々と語る方法」ピエール・バイヤール
崇拝する作家さんがお勧めしていたので買った。
著書のタイトルが強烈だが、タイトルのインパクト以上に深い内容となっていた。
本書では、「読んだ」「読んでいない」という二つの状態を更に事細かく分解して説明し、本との距離感などが記されていて、本書のを読むことで気兼ねなく本と関われるようになったような気がする。
例えば、著者は本を全て読むことによって、その本の思想までをも取り込んでしまうことを危惧し、本との距離を詰めすぎないようにするために流し読みを推奨していたりする。
また本書では、読書を神格化しすぎないようにと繰り返し警告されていて、本を読んでnoteで感想を書いたりする私にとっては非常に救いになるような本であった。
読んでいて思ったのだが、読書について、ショーペンハウアー著とも通ずるものがある気がするな。読書について考えるいい機会になったので皆さんもぜひ。
自主制作アニメ「宮子」
こちらは映像作品で、概略としては、宮子がある日鏡越しに見た女の子に恋をする。彼女は行く先々で姿を現し、やがて宮子は憔悴してゆき…といった感じである。
この作品の特筆すべき点は演出と世界観にあるだろう。
ストーリー終盤に差し掛かると、徐々に壊れていく宮子と狂っていく周りの世界、そして音楽までもが何処か狂気に包まれていくのだ。
この狂気の演出が中毒性を孕んでいて、何回でもリピートさせる因子になっている。
また、意味ありげなストーリーなのでそれを紐解いていくのも面白い。
そのため多くの人に考察されており、女の子=宮子で、肥大化した理想を追い求めるあまり、自己を見失う危険性を揶揄しているのではないか、理想と現実の差に耐えきれなくなった宮子の自尊心の崩壊を表しているのではないか、などと色々推察することが可能である。
「鈴瑚と清蘭の胃袋連結手術」 ガッkoya
過去最高にクレイジーな動画。
タイトルから推測できるように、胃袋を連結する手術をします。狂ってやがる。
終始「どうやったら思い付くんだ…」と思わせる物語で、発想力、描写力、オチと全てにおいて私の予想をゆうに超えてきた。そして初見でこの動画を見終えた際には必ず見返したい!と思うだろうといった怒涛の展開、テンポ感の良さがある。
あと、胃袋を連結したことによる体調への影響の描写は割とリアルで、そういう細かい写実さがより狂気を際立たせている。
怖じけずに見るべき作品だ。
「花束とハイヒール」ダウ90000
今話題沸騰の若手劇団のコントです。
このコント、状況の収拾の付け方が上手で、私の琴線に触れる類の作風だと感じる。
作中ではバラの本数が度々変わり、それによって花言葉も遷移し、物語の「意味」も段々と変化する……と演劇に近いような美しいコントである。
笑い所もちゃんとあって、才能の片鱗をひしひしと感じる。キングオブコントも出場予定だし、ついこの間第二回公演「旅館じゃないんだからさ」も行われるなど、供給も存分にある。今後が大注目の劇団であろう。
「図工」街裏ぴんく
漫談家、街裏ぴんくの傑作ともいえる漫談。
このネタを見終わった後、暫く「はぁ〜」みたいな感嘆に苛まれて、自分の動きが停止したかのような衝撃が全身を駆け巡った。
面白い。オチが綺麗。と漫談に必要な要素をふんだんに練り込むのが彼の得手でもあるのだが、この「図工」には更に、芸術論的側面も取り入れているように感じる。芸術の心理というか、考えさせられるような。そこも含めて良い漫談だと思う。
「けんちゃん」ななまがり
つい先日公開されたコント。発想もさることながら、テンポ感が圧倒的に良い。
「面白くなさそうなもの」を早送りする、という設定のみでここまで面白くできるのは、流石はななまがりと言ったところ。
やっぱななまがりのこういういい意味でのくだらなさがクセになるな。キングオブコント頑張れ!
さて。少々長くなったが、以上が九月の良かったもの備忘録でした。来月やるかは未定です。
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