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自分に退屈している人の噂話

じーーっと見ているけれど、話しかけて来ない人間は要注意だ。

元々そういう薄気味悪い状態だったわけでなく、最初は会話らしきものを持とうと話しかけて来た。でも、その内容の99%が人の噂話だったので、あまり私の食いつきが良くなかった。

そうなると、この手の人は冒頭にあげた『じーーっと見ているけれど、接触して来ない』状態になっておられる。

何でずっと見ているか?というのが分かるのか?というと、魚眼という職業病を持っているからだ。
病院時代から記録しながら周辺の状況を把握して異変に気付いたり、はたまた中々捕まらないドクターが詰め所に入って来た時に指示を貰うとか。
もっと遥か昔の時代のことを言えば、大人たちがいつ喧嘩を始めるか分からないのでおもちゃで遊んでいても様子を伺っていたりとか。

ナースや介護職の方々には、魚眼持ちの方々が多い。それは、目の前のことに没頭することをあきらめず、しかし周辺の危機的状況から身を守ることもあきらめず生きて来た人が多いという意味。苦労人が多いとか、苦労人が何か奉仕に関連する仕事に引き寄せられるとか、まあ、その辺の法則は横に置いておいて。

で、一日中人のことをじーーっと見ている人というのは、魚眼とは真逆の症状を持つ人だ。
多くの人は噂話が好きだから、それを提供すれば間違いないという実にモデル不足な交流パターンを持った人だ。一つか二つの方法で人と交流をしようとする。
それに乗って来ない人間は危険な人という二通りの分け方しかしない。

近づいて来ないわけだから、当然相手のことを深く知ることもない。その状態から相手のゴシップを探そうとするわけだから、昨今の週刊誌の何倍もの嘘で溢れかえる。

私の場合は、彼に『ナースを廊下に立たせて怒鳴りつけていた。』とか『○○くんとできている。』と、ありもしないことを言われ、それでも反応しないでいたところ、『あの人が病院側と敵対しているから利用者を入院させないらしいよ。』とか『あの人のいじめで多くの人が辞めて行った。』と、段々話が大きくなっていった模様。そしてこれもお決まりだけど、本気で信じる人もいた。

何もしていないし、それに少しでも関係することすらやっていないというところがミソで、あまりに現実とかけ離れていたために、やっと皆さんにただの嘘つきだということが知れ渡った。

もはやどうしようもないほど苦しい立場に立たされた彼は、この状況でも『違うんだ、違うんだ。本当は・・・』と作話で切り抜けようとしている。

その姿を観ていて気が付いた。人一倍名誉にこだわる人だったのだなと。複数、大勢の時間と支持を必要とする人だったのだ。だから私の名誉を傷つければ一番こたえるだろうと思ったのだろう。

彼は量より質という概念がなかった。真実への欲求もあまりないようだ。真実が自分に好都合なことばかりだったなら話は違っただろうけど。

何もしないまま、色んなことが起こったここ数日を経て、さすがに安堵した私。やはり身に覚えのないことを言われ続けたり思い込まれているのは多少のストレスだったらしい。

そして彼は、未だにまだこちらを見ている。ただ魚眼を止めて焦点を合わせると用事を思い出した脱兎のごとく逃げて行くというだけで。

人はそんなに変わらないのかも知れない。それでも構わない。
私は普通に会話できる人が好きで、噂話以外でも普通にユーモアをかませる人たちが大好きだから。

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