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それでもよし

夕方になると大声で叫ぶ人。

齢90にして突然お父さんとお母さんが迎えに来るんだ、新潟へ帰る、そこを通せと暴れる人。

施設中のスプーンを盗んで隠し持つ人。同じく胸の中に沢山のティッシュを溜め込む人。

皆薬で抑えるのか?違う。

とは言え、私たちに出来ることは限られている。清潔にして暖かい食事を出す。最も基本的なこと。
それだけは死守して、他に工夫する。
話す、聴く。話す、聴く。

そうすると不思議なことに段々笑顔の時間が増えて来る。

ある程度の不穏はそっとしておいて差し上げるのがよし。発散していただきたい。

振り上げたこぶしを瞬きもせずに眺めていたら、その手を下す人。脅す必要がないと気が付いた人。

喪失とか恐怖とか、色々なものを抱えたまま老いてしまった人たちも居る。

リクエストに応えてドリフをYoutubeで流したら爆笑している人々。でも、ちょっと不思議だよね。その時代のこの方々は子育て中で忙しくてドリフなんて観てないんじゃないかな?とも思ったり。

でも、ああ、そうかと思う。私も子供に見せているはずのアニメについつい引き込まれたりしていた。

難聴の人たちもまでもが笑うドリフ。ゲストの人たちも含め、天才的な絵面なのだろう。

叫んだり暴れたりする時を経て、ぶぶっ!と吹き出すように笑う面々。

今日も、それなりに看護できた。

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