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Plat Fukuoka cycling vision2021 WHY WE CYCLE上映会-福岡が「自転車にやさしい都市」となるためには@自転車100人カイギvol5(1/3)

Plat Fukuoka cyclingは福岡がbicycle friendlyな都市(まち)となるための様々な提案を行うべく、スタートしました。

 bicycle friendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して、自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。

 これまでのPlat Fukuoka cyclingは下記の目次よりリンクしていますので、ご覧ください。

0.Plat Fukuoka cycling vision
1.Copenhagenize Index2019を読む
2.Plat Fukuoka books&cycling guide
3.Plat Fukuoka cargobike style
4.Fecebook ページ
5.Instagramページ
6.twitterページ
7.Plat Fukuoka cyclingの本棚(リブライズ)
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Plat Fukuoka cyclingが運営をお手伝いしている自転車100人カイギ※1。

その第5回はPlat Fukuoka cyclingの目指す将来像を表現したドキュメンタリー映画『Why We Cycle: 私たちが自転車を使うわけ』の上映会と合わせての開催となりました。

今回は、Plat Fukuoka cycling vision2021の一環として、自転車100人カイギvol5のレポートをお送りいたします。一度にまとめきれないため、前編として、映画を上映した理由と、映画の上映を実現していただいたCycling Embassy Japanの岩佐岳仙さんとのクロストークまでをダイジェストでお伝えいたします。

○なぜPlat Fukuoka cyclingがWHY WE CYCLEの上映を目指したのか

 この映画は、オランダの自転車文化をオランダの優れた自転車インフラという側面ではなく、自転車を使う人びとにフォーカスし、なぜオランダに住んでいる人々が自転車を使っているのか、使っている率直な思いを綴っています。オランダの自転車文化の核心を余すことなく表現しており、人間の内側から表現されるもの、それを「文化」と呼ぶのかもしれませんが、この視点が私たちに様々な示唆を私たちに与えてくれているのではと思います。

 予告を見ていただけるとわかるのは、オランダの自転車は、単なる移動手段ではなく、社会にとって必要な要素として位置づけられているということです。
 さて、この映画は、オランダ航空(KLM)などの機内でも放映されてはおりますが、初めて知った時にこの映画にきちんと日本語字幕がついていることに驚いたというのが最初の印象でした。岩佐さんとのクロストークも映画の日本語字幕作業の話から始まっております。
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(以下はリンクサイト:2021年3月14日に開催された「自転車100人カイギvol.5」の前半の岩佐岳仙さん(以下「○」)とPlat Fukuoka cyclingの安樂(ー)とのクロストークの内容をお届けいたします。)

○横浜を中心に、Cycling Embassyとして、自転車の啓蒙活動、上映会、カーゴバイクレースなどを主催してきました。もともとは建築を仕事としていて、自転車も好きで、自動車中心でないまちづくりということで、そういう都市はどこかオランダかデンマークと思っていたところに、たまたま、自転車まちづくり仕掛けているコペンハーゲナイズが主宰するマスタークラスに参加する機会を得て、そこからも様々な取り組みをおこなっています。

ー「WHY WE CYCLE」に日本語字幕実現をつけようとなったのはどういった方々が動いて実現したのですか?

○2017年にWHY WE CYCLEが封切りとなったとき、世界中の自転車まちづくりの界隈で話題になっていました。日本でも上映したいと思っていたところに、映画の監修をしているアムステルダム大学の自転車都市研究所のマルコー教授のもとで学んでいた山本さんととCycling Embassyのメンバーがつながり、山本さんが既に日本語字幕をつけていることを知り、映画の監督を通じて、渋谷で上映会※1を行うことができました。

―岩佐さんがこの映画をみて、最も印象に思う点はどんなところでしょうか。
○デンマークは国のブランディングとして自転車の国というのを全面に押し出しているところがある一方で、オランダでは映画でもあるとおり、人口よりも自転車の方が多く、人々が当たり前のように自転車を使っている国です。そのため、あまり自分たちオランダ人にとっての自転車について深く考えたことがなかった。そこを改めて深堀しているところが打ち出されており、オランダやデンマークを都市デザインの目標・テーマにしている国や都市にとってはいい教材でもあり、センセーショナルなところと感じています。

―オランダの自転車を通した都市デザインを映画で見ると、日本にはオランダの同じようにママチャリともいわれるシティサイクルが普段使いの自転車として、あらゆる世代で使われています。そういった点は、この映画からも、日本でもオランダようなBicycle Friendlyな都市デザインが可能であることを感じます。岩佐さんは世界自転車都市ランキングを発表しているコペンハーゲナイズのマスタークラスの経験から、特にインフラ以外の要素として何を感じますか?

○コペンハーゲナイズのマスタークラスでも、自転車のインフラなどの技術的な話が多いと思っていたが、行ってみると都市と人の関わり方、彼らのがよく使う言葉で「Life Sized city(等身大のまち)」という考えがよくでてきた。というのも自動車が出現するまでの都市は、人間の身体的なスケールを基につくられてきた。道路が交通のためではなく、そこで行われる人々のいろんなアクティビティのためにあるということを再考する、取り戻す、そのうえで自転車が有用であることが語られています。この考えはコペンハーゲナイズインデックスのなかでも、あらゆる人が使っているかなどの視点が明らかになっていると思います。

―コペンハーゲナイズインデックスとして、トップ20の都市ランキングが2年おきに発表されています。最新版2019年ですので、今年がインデックス2021がでるであろうというところです。コロナ禍において、欧米各都市で自転車の利用が急速に進んでいる中で、ランキングがどう動くのか。2019でアジアで掲載されている東京と台北の位置はどうなるのか大変気になるところです。でもって福岡のような都市がランキングの掲載されるために、どんなことが必要になると思いますか

○日本の都市では東京がインデックスの上位に食い込んでいた時期がありまいた。これは、すでに幅広い自転車利用がある東京で、オリンピックを契機に、ロンドンがオリンピック開催を機に都市再生、そして自転車整備が進んだ※2ことへの期待もあったようなところがあった。ただし、実際整備がされたのは、矢羽根マーキングのようなものであり、自動車の速度規制などヨーロッパでの取り組みと比べると実効性が低いところがある。このコロナ禍で各都市、自転車利用を進めるハード整備が進んでいるので、もしかすると2021年以降、20位外になってしまう可能性もある。ランキングの要件としては、パーソントリップ調査などの根拠となるデータが公表されているかも重要になる。さらにそれが、英訳されていて都市の状態を簡単に入手できるようなことがあると掲載される可能性がある。

―自治体がもっている様々な統計データがよりオープンであり、かつ翻訳されることが重要ということですね。福岡では、自転車ではないものの、電動キックボードの利用が可能になったりと、自動車ではないモビリティ分野の明るい話題がでてきたりしています。それらをきちんと海外へも発信できるような取り組みが必要であるということですね。

―最後に、岩佐さんが考える都市の将来像について、お聞かせできればと思います。

〇WHY WE CYCLEに凝縮されているところがあると思っています。日本でも移動の自由あらゆる年代が移動できる環境が備わっていなければならないと思います。自動車があればもちろん便利ではあるけれども、自動車に頼らなくともず、あらゆる世代やハンディキャップがあるひとでも移動できる、乗り物が人を選ぶのではなく、人が中心であって、移動による格差を生まないような都市が健全だと思います。
 ひとの交流、象徴的な例えとして、マルコ教授がよくムクドリの話をしているのですが、ムクドリの群れは、リーダーなどいなくとも集団で飛んでいてもぶつかることがない。都市の移動というものも、人間が持っている感覚をもっと信じた移動のデザインをしていくとオランダのような都市になるだろうし、そんな都市を目指したい。そして自転車が有効であると信じています。

―余談ですが、今回のWHY WE CYCLEには、続編がでていると聞いております。

〇TOGETHER WE CYCLEというタイトルで、オランダが現在のような自転車の国になるまでの政策的な視点にフォーカスした映画になります。こちらも字幕作業を行っていき、みなさんにお届けしたいと思ってます。

―楽しみにしております。ありがとうございました。
(ここまで)
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自転車によるまちづくりは、自転車アーバニズムともいわれます。かつて、人々の移動手段として、自動車が登場したとき、都市は人々の移動の手段のために巨大な道路が縦横無尽に走り、建築は自動車の車窓から見える程度であり、細部の装飾は求められず、流線形のモダニズム建築が建築思想の様々な流れから、誕生することになりました。

 建築雑誌『a+u』の2021年最初の号の特集が「Bicycle Urbanism(バイシクル アーバニズムー新しいモビリティと変化する都市)」でした。
 今回上映をしたWHY WE CYCLEの舞台であるオランダはバイシクル・アーバニズムの先駆であり、オランダにおけるバイシクル・アーバニズムについて、建築家・都市計画家であるステファン・ベンディックス氏のエッセイの一文から引用いたします。

○Bicycle Urbanismを考える@『a+u(建築と都市)2021.1』(エー・アンド・ユー)

私は、都市計画家として、サイクリストのために何ができるかよりも、むしろ、都市を計画する上でサイクリングに何ができるのかに関心をもつ。そして全世界がそこから得られるものがある。(中略)都市計画の観点に最も関わってくるのは、個々人が自動車から自転車に移行するにしたがい、かつて自家用車を運転、駐車するために利用されいた膨大な空間が公共に解放されるという点である。
(中略)既存の都市構造においては、公共空間の容量をおいそれとは増やせない。課題となるのは、使用可能な空間をこちらの層から別の層へ再配分することである。そして、これは交通空間を公共空間に転換することを意味している。
 したがって、「自転車アーバニズム」という用語が示唆する内容とは異なり、単一の移動手段にとってのみ理想的な環境を形成することを目的としてはならない。むしろ多くの側面で都市全体を改善することがその目的であるべきだ。(中略)私たちは、自転車でもう一度同じ過ちを犯すのではなく、古きよき自転車を都市改善のための触媒として使用すべきである。
(『a+u』2021年1月号P51より抜粋)

引用文の後半にある「過ち」というのは、「都市計画家が単一の移動手段を第一義に設計するという罠に陥ったこと」と指摘し、街中が道路で埋め尽くされた自動車が登場した時の未来都市像を指しています※3。

Plat Fukuoka cyclingもbicycle friendlyというと「自転車にやさしい都市」となると思いますが、私は「自転車がやさしい都市」になってほしいと考えています。それは歩行者に対しても、バイクやバス、自家用車…つまりは都市に対して、自転車がやさしくできる都市でありたいと思うのです。

福岡が自転車にやさしい都市となるためのヒントを、岩佐さまよりいただけました。Plat Fukuoka cyclingは今後も、福岡が真の自転車アーバニズムによる都市となるよう、活動していきます。

次回は自転車100人カイギの登壇された、カーゴバイクによる自転車屋台活動を京都でされている、なかにし ひさみちさんのトークの内容とカーゴバイクが都市に与えるイノベーションについて、考えます◎

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〈参考文献等〉
※1日本で最初の上映会は、東京渋谷のヒカリエにて、2019年8月26日に開催されました。(https://whywecycle-movienightnight.peatix.com/

※2イギリスのロンドンの自転車通行空間についてはSTREET FILMSさんの動画が最もまとめられています。英語ですが、こちらにも日本語字幕がついておりますので、ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=CxpJL8RWRWg&t=90s

※3自動車による都市像は、近代建築家であるル・コルビュジエが1925年に発表したパリ改造構想「ヴォアザン計画」などが有名です。ただコルビュジエなどの近代建築家の思想を読み解くと、自動車と歩行者の分離などの言及も見られることから、別途books&guideでご紹介します。

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