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【美術館と建築】 建築自体が巨大なカメラ?!のユニークな写真美術館 ー植田正治写真美術館(鳥取県西伯郡伯耆町)

 鳥取県の大山のふもと、のどかな田畑の風景の中に抽象絵画のような印象的なコンクリートの建物が現れます。

植田正治写真美術館

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 写真家の 故・植田正治さん (1913年-2000年) の個人美術館です。「砂丘シリーズ」の舞台として有名な鳥取砂丘からは車で約90分ほどの美術館。植田正治さんの作品はもちろん、建築も楽しめる美術館でした。

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(せっかくならば、併せて寄りたい鳥取砂丘。)

① 植田正治さんの代表作「少女四態」をモチーフにした建築。

 鳥取県出身で、山陰の風景を被写体として撮影を続けた写真家・植田正治さんご本人から寄贈された15,000点の作品を収蔵、常設展示している美術館です。

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 設計は建築家・高松伸さん。高松さんはお隣の島根県出身で、松江地方合同庁舎や玉湯町健康増進施設・ゆ~ゆなど、島根県内には高松さんの建築も多数あります。

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(持ち上げられた半球と、ショートケーキのような三角柱の組み合わせ構造が印象的な 玉湯町健康増進施設・ゆ~ゆ)

 建物の形状は、植田さんの1939年の作品である「少女四態」がモチーフとも言われていて、完成時、その作品との共通性にいたく喜んだとも。多くの直線と、いくらかのカーブが積層され、建物自体が抽象画のような雰囲気です。

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 展示室では、年代を追って作風の変化していく植田氏の作品の常設展示のほか、年2−3の企画展が開催されています。

② 美術館自体が巨大なカメラ?

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 では、チケットを購入して展示室へ。

チケット

(チケットも、建築を意匠化していて素敵です。)

 映像展示室では、200インチの大型映像システムによる映像プログラムが上映されています。そして、この映像プログラムの後、特別な仕掛けが展開されます…

 それは、展示室に映し出される巨大な”逆さ大山”の像。(※展示室内は撮影NGのため、写真はありません。)

 この展示室には、最大直径600mmというカメラレンズがとりつけられていて、展示室自体が超巨大なカメラ… カメラ=写真機の語源であり、15世紀頃から風景を描く補助具として芸術家たちがが使ってきた、外の風景の像を映す装置「カメラオブスクラ」のようになっています。(トップの外観写真で、一番左の塔の穴の開いて見える部分がレンズ部分です。)

 世界最大規模のカメラレンズは5枚のレンズで構成されていて、レンズの総重量は245kgもあるのだとか。写真美術館自体が「カメラ」という、遊び心のある仕掛けですね。

③ 建物の内部から見る風景も印象的。

 「伯耆富士」「出雲富士」とも呼ばれる美しい大山のふもとにあるこちらの美術館。

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(富士山のようなシルエットの美しい大山。)

 四角いコンクリートの塊ではなく、いくつものスリットが入った構造になっている建物の廊下は大きなガラス張りになっていて、その大山を望むことができます。

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 外から見た時にはわかりづらかったのですが、そのスリットのくぼみ部分は池になっていて、水面に写る「逆さ大山」も楽しむことができます。映像展示室で見たのとはまた違う、鏡面に映る逆さ大山です。

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(スリットの合間に覗く大山。掛け軸のようです。)

 ガラス戸には、植田さんの作品で有名な帽子のシルエットが貼られていたり、ステッキや風船のような小道具が用意されていたり。写真を見るだけでなく、好きな写真を真似て楽しめるような嬉しい工夫も。

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 植田正治さんの作品も、建築も、ゆったりとした展示室でともに楽しめる美術館でした。

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グレー

【Data】 植田正治写真美術館

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時間:9:00-17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週火曜日(祝日の場合は翌日)
※12/1~2/末日は休館 ※展示替期間中は休館
入館料:一般 900円、高校大学生 500円、小中学生 300円
所在:〒689-4107 鳥取県西伯郡伯耆町須村353-3
TEL:0859-39-8000



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