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役に立たないけれど 愛おしい機械。 ー心ある機械たちagain @BankART SILK、BankART Station

 会場の中では、とにかく全ての作品が動き回っています

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 横浜のBankART SILK & BankART Stationで開催中の「心ある機械たちagain」展。人の役には立たないけれども、愛おしい機械ばかりの展示でした。

1) ダイナミックな動きから繊細な動きまで。 会場中は ”動く” 作品でいっぱい。

 「機械仕掛けの作品」「動く作品」といっても、その動きは様々。

 はじめに目につくのは、ガーッと大きな音を立てながらレールの上をものすごいスピードで移動していく牛島達治さんの《まっすぐなキュウリたちの午後(競争)》や、巨大な鹿の彫刻がぐるぐる回り続ける、タムラサトルさんの《回転する3頭のシカ》のようなダイナミックな動きの作品。

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(《まっすぐなキュウリたちの午後(競争)》 / 牛島達治 (2019/1997))

 一方では、気をつけないと作品とも気づかないかもしれない、とても小さな動きの作品も。

 BankART Station内のカフェで、カウンターに置かれたコーヒーカップの中では静かにコーヒーが攪拌されていたり、壁にかけられた時計は針ではなく文字盤の方がひっそりと回っていたり。(ともに片岡純也さんの作品。)また、会場の奥ではししおどしのような装置で1滴ずつ静かに落ちた水滴が、再び静かにチューブに吸い込まれ、会場の中を血液のように循環していったり。(早川祐太さん《luna》)さまざまな ”動き” の表現をみることができます。

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(《Coffee cup》 / 片岡純也 (2019))

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(《luna》 / 早川祐太 (2009))

2) 機械仕掛けから生まれる、自然の動き。

 「機械」といっても、動き全てが機械制御されているわけではなく、機械仕掛けと自然な動きを織り交ぜた作品も。

 片岡純也さんの《Floating paper》は、天井からコピー機の紙送りのように紙が送られ、その後、自然落下ですーっと静かに床まで落ちていきます。その動き自体は制御されていませんが、ゆっくりすーーっと垂直に落下していく動きは、自然に発生する動きでありながらも日常にはない動きで、心地よいです。

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(《Floating paper》 / 片岡純也 (2017))

 本棚に置かれた片岡純也さんの《めくりあう本#3》は、キービジュアルにもなっている作品。2冊の文庫本が回転しているだけですが、ぶつかると、摩擦でお互いのページをぱらぱらとめくりあい、自然な動きながら生き物のようにも見えてきます。

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(《めくりあう本#3》 / 片岡純也 (2019))

3) 機械が奏でる、アナログな音楽。

 そして、機械で動きつつも「アナログ」な演奏をする機械たちも。

 川瀬浩介さんの《ベアリング・グロッケンⅡ》は、階段状になったグロッケン(鉄琴)の上をベアリングのボールが跳ねる事で音楽を奏でる機械。金属同士がぶつかって奏でるすんだ音も、いくつものボールが跳ね回る動きも、そして、跳ねたボールを回収していく機械的な動きもすべてが面白い作品です。

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(《ベアリング・グロッケンⅡ》 / 川瀬浩介 (2009))

 また、BankART Silkに展示された三浦かおりさんの《廟の音》は、時計の秒針の先に小さな鈴がつけられた作品。並んだ時計の針が少しずつずれながら本当に小さくて可愛い音を奏でていて、静かに耳をすませてしまいます。

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(《廟の音》 / 三浦かおり (2019))

 すべて機械仕掛けで動いているものの、それ自体が彫刻作品のようだったり、動きがパフォーマンスのようだったり。また、一部を取り出すと絵画のように見えたりと、”機械”の要素が様々なジャンルの作品に展開できる可能性と面白さを感じる展示でした。

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 ちなみに、BankART SILKに展示されているこちらの作品。100円を入れられるようになっているので、思わず何も考えずに入れてしまいそうになりますが…

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 壁には「展示台にコインを投入すると不測の事態となります。」との但し書き。

 … というか、"不測の事態"  というよりも "起こるべき事が起こる" ように見えてしまうんですが…

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(《不測の事態》 / 武藤勇 )

 何が起こるのか試したい、でも怖い…という葛藤を抱えまくってしまう作品でした。(結局、一部始終 目撃しましたよ…)

 どの作品も愛おしい機械ばかりの展覧会でした。「心ある機械たちagain」展は2020年2月2日[日]までです。

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【展覧会概要】「心ある機械たちagain」展 @BankART SILK、BankART Station

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会期:2019年12月28日(土) 〜2020年2月2日(日)
時間:11:00〜19:00、12月30日〜2020年1月3日は休館
入場料:一般 600円、障がい者手帳提示(付添の方1名を含む)、中学生以下 無料

 2008年にBankART1929で開催した「心ある機械たち」。あれから10余年を経て、下記のような「心ある機械たちagain」を企画してみました。基本的に役にたたないけれど、常に黙々と働いていて、どこかやさしく、そこにいても邪魔にならない、でも何か気になる、そんな運動体の展覧会。再登場の作家もいますが、基本的に初登場の作品群です。
アーティスト:牛島達治、 タムラサトル、 川瀬浩介、 早川祐太、 西原尚、 片岡純也、 武藤勇、 小林椋、 今村源、 三浦かおり、 田中信太郎


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