見出し画像

”どこまで行っても完結することがない”絵画 ー「本と美術の展覧会vol.3「佐藤直樹展:紙面・壁画・循環」」@太田市図書館・美術館

 「本と美術は、同じ場所から生まれてきているんじゃないか。」

 そんなステートメントで始まる展覧会が、図書館と美術館が融合した、太田市図書館・美術館で開催されています。

本と美術の展覧会vol.3「佐藤直樹展:紙面・壁画・循環」
@太田市図書館・美術館

 「本と美術の展覧会」の第3弾として開催されているのは、「WIRED」日本語版 などを手がけてきたデザイナー/アートディレクター・佐藤直樹さんの個展です。

 1Fから2Fへ向かうガラス張りのスロープには、佐藤さんの手がけたWIREDやART iTなどのデザインが壁面いっぱいに並びます。雑誌の見開きが整然と並ぶ様子は、建物の外から見た時にも、ショーウィンドウをみているようなインパクトと楽しさがあります。

 そして、1階から3階の展示室には、佐藤さんが2013年から手がけ始めたという「そこで生えている。」をはじめとした、木炭画の作品が会場の壁面いっぱいに広がります。(1Fとスロープは撮影可能でした。)

 「完成を想定しない」とステートメントに書かれたこの作品は、今回の展示で展示しきれないものも含め、175枚の木製パネルによる連作です。

 木材に木炭で描かれた一面の植物の風景は、時には鳥の目、時には虫の目から見たような、多様な視点が連続的しています。作品に沿って歩きながらも、対象に近づいたり遠ざかったりしながら見ているような不思議な感覚になります。

 3Fも、木炭画の作品が続きますが、こちらは太田市で描かれた新作とのこと。まだまだ作品は完結することなく続いていきます。

 1990年前後、当時の最先端のDTP技術を使い、テクノロジーから未来を考える「WIRED」などの紙面を制作されていたという佐藤さんが、2010年代に手仕事の木炭画へと変化したきっかけは、「それまで意識したことのなかったある場所の気配に身体が反応した」と書かれていますが、展示を観てもその変化の不思議さは残ったままでした。

 ただ、「本をめくる手」と「作品を描く手」を2つのディスプレイで対比させた作品を観ながら、ひょっとしたら、道具の異なるこの2つの行為は、地続きなのかもしれないと、冒頭の言葉を思い出しました。

 2019年10月20日までです。

■本と美術の展覧会vol.3 佐藤直樹展:紙面・壁画・循環 @太田市美術館・図書館

会期:2019年6月29日〜10月20日
時間:10:00〜18:00
休館日:月(ただし7月15日、8月12日、9月16日、23日、10月14日は祝休日のため開館し、翌火休館)
料金:一般 500円

佐藤直樹の公立美術館では初となる個展。13年に描き始めた、植物を主とした木炭壁画《そこで生えている。》は、完成が想定されないまま、いまや幅160メートルを超え、さらに日々増殖を重ねている。本展では、折々で対峙していた状況に「自身が全力を注いで行えることは何か」ということを考え、循環的に表現を変えてきた佐藤の足跡をたどることができる。


最後まで読んでいただきありがとうございます。良かったらサポートいただけたら嬉しいです。サポートいただいたお金は 記事を書くための書籍代や工作の材料費に使わせていただきます。