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見えづらいものを「関係」で可視化する ー「みえないかかわり」 イズマイル・バリー展 @銀座メゾンエルメス フォーラム

 銀座のエルメスの扉を開けてもらうのはいつも緊張してしまうのだけど。少し緊張しながらも、本当に行ってよかったなぁと思う展示です。

 「みえないかかわり」 イズマイル・バリー展 @銀座メゾンエルメス フォーラム

1) 明るすぎて見えないものを 影を使って見る

 まずは映像作品《出現》。紫色のもやがかかった真っ白い画面に。続いて、四角いフレーム。そこに手が差し出されると、フレームの中に人の姿が見えてきます。

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 そこで初めて、写真に当たる光が強すぎて 像が見えなくなっていたことに気づきます。映像が進むと見えなかったものが次々と見えてきて…あぁ、そうか、私たちは当たり前のように光を見ているけれど、明るすぎると見えなくなるものがあるんだなぁと気づきます。

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 続く展示室では、壁に細い線。この不思議な線を辿って行くうち、”描かれた線”ではないことに気づきます。

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 見ているものは光だけれど、それだけではないから見えるものに気づきます。

2) 小さすぎて気づかない動きを 関係で可視化する

 続く展示室では、ガラスブロックで囲まれ、普段は光のたっぷり入る展示室が今回はなんだか薄暗い。窓のまわりに板の壁が作られています。

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 その明るい外と薄暗い中をつなぐ小さなトレーシングペーパーがかけられています。《ジェスチャー #2》。近づくと、ゆらゆらと紙が揺れるのに伴って、外からの灯りがちらちらと揺らいで見えます。無風に見えるような展示室でも、空調か人の動きか、それとも鑑賞者の体温なのか、空気の流れができていることに気づきます。

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 また、映像作品《線》では、手首の上に水滴がのせられ、ただそれだけだけれど、普段は気づかない脈が見えてきます。

 小さすぎて見えないものが、ちょっとしたモノが介在するだけではっきり見えるものになるようです。

3) メディアとコンテンツを 分離して見る

 普段は作品が乗っかっているメディアと、その中身(コンテンツ、と呼ぶのが適当かはわかりませんが)の関係も見えてきます。

 《転回》は、雑誌のページのようなものを延々と揉む映像作品。なんだろう?と見ていると、長い時間をかけて、紙からインクが剥がれ落ち、紙に戻っていきます。

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 また、タイトルにもなっている《みえないかかわり》も、夜の波打ち際のように水の上の灯りが揺らいで見える作品は、同じ展示室のなかにある立体作品をリアルタイムで撮影している様子。こちらもまた、実際に見ると、コンテンツとして見ていたものが、別のもとのして映ってくる、不思議な感覚になります。

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 薄暗く静かな展示室で、わずかなものに気づきたくて、頭を作品に集中させながら見られる環境も大きいのかもしれません。

 2020年1月13日(月・祝)までです。

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【展覧会概要】「みえないかかわり」 イズマイル・バリー展 @銀座メゾンエルメス フォーラム

フライヤー

会期:2019年10月18日(金)~2020年1月13日(月・祝)
時間:月~土曜 11:00~20:00(最終入場19:30) 日曜 11:00~19:00(最終入場18:30)
※不定休
※12月の一部期間は開館時間が異なる(11:00~16:30・最終入場16:00)。
※年末年始はエルメス 銀座店の営業時間に準じる。
入場無料

パリとチュニスを拠点に活動するアーティスト、イズマイル・バリーの個展。イズマイル・バリーは、写真や映画の原理を用いた視覚実験や、最小限の儀式的な身ぶりから啓示的に生じる、ある種の“魔術”を呼び起こすような現象や痕跡などを通じ、目に見える“事物”や“知覚”そのものの儚さを問う作品を制作している。
本展では、新作の映像を中心に、オブジェ、ドローイングなど異なる形式の作品を展示。銀座メゾンエルメスの建築そのものが、現れては消える外の世界をとらえる一種の光学装置として機能する。


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