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青春映画の佳作『コーダ あいのうた』と『カセットテープ・ダイアリーズ』 2022年1月30日(日)

先日、休みの日に『カセットテープ・ダイアリーズ』を見た。話題になっていたが、映画館で観ることが出来なかった作品。

音楽好きなパキスタン系の高校生ジャベドは、閉鎖的な町の中で受ける人種差別や、保守的な親から価値観を押し付けられることに鬱屈とした思いを抱えていた。しかしある日、ブルース・スプリングスティーンの音楽を知ったことをきっかけに、彼の人生は変わり始める。(映画.comより)

実話を元にした作品で、友情や恋愛、進学など青春映画の定番的なエピソードが出てくるのだが、主題は家族(特に父親)の呪縛からの脱出であり、それが通過儀礼として描かれている。

昨日観た『コーダ あいのうた』はこの『カセットテープ・ダイアリーズ』に似たテーマで、一見聾唖者の家族で唯一の健聴者である主人公ルビーのヤングケアラーとして苦悩を描いているように見えるが、普遍的な家族との関係性の折り合いとその呪縛からの解放を描いているピカピカの青春映画である。

海の町でやさしい両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。(映画.comより)

『コーダ あいのうた』と『カセットテープ・ダイアリーズ』と似ている部分を挙げると、

・主人公が学校で疎外感を持っている(聾唖者家族/パキスタンからの移民家族)
・家計が苦しい(家業である漁業がうまくいかない/親がリストラ)
・才能が開花(合唱部に入る/詩や記事を書く)
・メンターである教師からの大学進学の推薦(V先生/グレイ先生)

そのほか音楽がともに重要な役割を担っていてラストに至るまでの過程も似ている部分があるし、最終的な着地点も同じである。

両作ともミニマムな作品ではあるが青春映画の佳作であり、近いタイミングでみることが出来て良かった。

『コーダ あいのうた』にフォーカスすると、海の場面と対象的に森の中の湖の場面が出てくる。
ルビーにとって秘密の場所のようなところで、そこでは大きな声で歌を歌うことができる。
家族と一緒にいる「海」は彼女にとってある意味制約された場所になっているのだが、閉鎖的な空間であるはずの森の中の「湖」は打って変わって彼女にとって開放される場所として描かれているのが面白かった。

年齢を重ねてもこういう青春映画に心を動かされるというのは一体なんなんだろうなと思いながら、映画館を出ましたね。

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