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ルサンチマン 新装版

"2015年 東京。世界はそれほど進歩していない。ある分野をのぞいて"2004年から連載された本書はメタバース社会を先取りする一方、現実世界と仮想世界との落差を強調した"報われない傑作"2012年新装版。

個人的にはメタバースでの体験を友人に話した際に"そのまんまこの漫画の世界"と紹介されたので手にとってみました。

さて、そんな本書は実写映画化もされた『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『アイアムアヒーロー』でも知られる著者のデビュー作で、零細印刷所に勤める独身、デブ、ハゲ進行気味の主人公の『たくろー』が、いわゆるネトゲ廃人の越後『ラインハルト』に誘われる形でフルダイブ型MMO、仮想現実世界アンリアルを知り、そこで特別なAI、月子と出会ったことで現実と仮想世界が交差する出来事に巻き込まれていくわけですが。

まず、2022年現在。現メタ(旧FB)等の参入で多分に流行的な流れにのって、メタバース生活を始めている私からすると、2004年と【今から18年前に描かれているにも関わらず】技術的な設定も含めて陳腐さや古臭くは全くなく、むしろ違和感なく【現在進行的な物語として楽しめる】のにびっくりしました。

一方で、Vチューバー文化の定着や、AIも含めて現実世界以上に、あるいはジェンダーレス、肉体制約に縛られない別世界としての"仮想世界"の可能性を感じている私からすれば、仮想世界に比べて【必要以上に醜悪かつ悲惨。現実逃避気味な】主人公『たくろー』達などの描き方には抵抗感を覚えましたが、実際にヘッドマウントディスプレイをつけてメタバースにダイブした経験のある方以外には、まあ。【現在もこんなイメージなんだろうなあ】と諦めも。(逆に文化的フィルターとして有効に機能しているとも言えるし)

著者のデビュー作にして初期傑作として。またメタバースに興味ある男性にもオススメ。

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