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サクッとわかるビジネス教養 地政学

"地政学とは何なのでしょう(中略)私は『国際政治を冷酷に見る視点やアプローチ』と考えています。多くの日本人が思うよりも、国際政治での国家のふるまいは冷酷で残虐です。"2020年発刊の本書は地政学の第一人者による、サクッとビジュアルとテキストで世界情勢が掴めるビジネス教養書。

個人的には著者曰く"国際政治が『劇』とすれば『舞台装置』"とも例える地政学には関心が以前からあったので入門編として手にとりました。

さて、そんな本書は地政学及び地政学の歴史を簡単に紹介した上で、四章構成になっており。まず一章で【地政学の基本的な6つの概念】覇権国家アメリカの(日本も含めた)世界コントロール手法、そのための考え方の背景として『バランス・オブ・パワー(勢力均衡)』海上の関所『チョーク・ポイント』支配、『ランドパワー』vs『シーパワー』『ハートランド』vs『リムランド』各国の『拠点』争い。などを説明した上で、二章から四章にかけて日本、アメリカ、ロシア、中国、アジア、中東、ヨーロッパの地政学的特徴を具体的に【ビジュアルとわかりやすいテキスト】で解説してくれているわけですが。

著者の本は初めて読みましたが、国際的に地政学を学び、防衛省の幹部学校でも地政学や戦略論を教えている方らしく、ネットやメディアに意図的に溢れかえる『義理人情的な美談』や個別政治家の『表向きに切り取られた発言』ではなく、あくまで【互いの国益の為に延々と領土・勢力争いを殺伐と続けている】まさに国際政治の舞台裏を俯瞰的に学ぶことができ、すっきりと理解できる読後感でした。

また、本書のおわりには2018年のアメリカの中国への宣言を受けて始まっている『新冷戦時代』に突入した中で、それぞれの国が支援する【二つの派閥が争う内戦】局地戦の勃発や、相手国家がコストをかけざるを得ない部分を狙う【コスト・インポージング】戦略を相手国に仕掛ける可能性、またそれにより日本国内も【親米派と親中派の分断】が起きると指摘しているわけですが。『右や左、派閥や政党といった目先の情報』ではなく、そういった眺め方で【日々報道されているニュース】を意識して捉えると、こちらも浮かび上がって見える意図、背景がわかってくるように感じました。

地政学に興味がある人の入門書として、また意図的な美談ではなく、ちゃんと国際情勢や政治を理解したい方のサブテキストとしてオススメ。

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