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三十の反撃

"世の中に変化を引き起こすために必要なのは、いたずら、あるいは遊びだ。遊ぶように、不当なところに一針を刺す。そうすればいつかは何かが変わり、だんだん広がっていくだろう。それが彼の主張だった"2017年発刊の本書は"普通の人"が社会の構造的矛盾に果敢に立ち向かう応援歌的小説。

個人的には著者の前作『アーモンド』が面白かったことから本書も手にとりました。

さて、そんな本書は1988年ソウルオリンピックの年に生まれ、その年生まれで一番多い名前『ジヘ』と名付けられた主人公が、その名前通り平凡な幸せを目指し30歳になってもインターンをしながら正社員を目指し毎日を過ごしていた所、同じ年の同僚ギュオクと出会ったことで、仲間たちと世の中のニセモノたちや不条理に対する"ささやかな反撃"を開始し始めるのですが。

まあ、まず訳者が素晴らしいのか、あるいは日本と同じく非正規職の若者たちが将来に不安を覚える姿に親近感を覚えるのか、もしくは著者が映画の脚本を手がけてきたからか。いずれにしろ本書はいわゆる『韓国文学』なのですが。『まったく違和感なく』スラスラと【映像を脳裏に浮かべながら】読み進めることができたのが驚きでした。(いつか映像化しそうな予感もする)

また、後書きではないが。前作『アーモンド』の主人公と違って、あくまで本書の主人公、そして仲間たちは理想的な人物というより【それぞれに欠点や弱さを抱えた人たちで】結果として彼女らの社会に対する"反撃"も【必然的な着地を迎える】のですが。ラストの清涼さも含め、その辺りの等身大さも身近さを感じ良かったです。

読みやすい韓国文学の入り口的一冊として、また社会に生きづらさを感じている方にもオススメ。

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