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探偵は教室にいない

"僕のライフ・スタイルは土日祝平日といった世俗的慣習に左右されない。かといって、毎日が夏休みなどという指摘は愚かだ。僕はそこらに転がっている有象無象より遥かに刻苦勉励し、己を磨いている。"2018年発刊の本書は、北海道の学園を舞台にした爽やか日常系ミステリ。

個人的にはミステリをテーマにした持ち寄り読書会で紹介されて手にとりました。

さて、そんな本書は中学バスケ部に所属する高身長の女の子、海砂真史にある日届いた差出人不明のラブレターをめぐって、9年ぶりに不登校児(=教室にいない)の幼馴染み、甘いもの大好きな鳥飼歩に相談の為に再会するところから始まり【中学生らしい等身大の謎】合唱コンクールや誕生日プレゼント、プチ家出といった次々に起きる難事件(笑)に挑んでいく連作短編集なのですが。

最近、バタバタと人が連続して殺されていく殺伐としたミステリばかりを手にしていたこともあって、当たり前に『人が死ぬ』という【社会的な大事件は起きなくも】また大人にはたいした問題でなくても【中学生同士の日常では切実な大問題】に違いないことを丁寧に"謎"として取り上げているのが、とても印象に残り、好感を覚えました。

また、続編で不登校の理由などが明らかにされていくのでしょうか?本書における探偵役、不登校児ではあるも全くその事でのネガティブさはなく、むしろ【謎に太々しく大人びた鳥飼歩】他、登場人物たちがとても健全かつ魅力的なのも爽やかな青春ものとして、とても良い読後感でしたね。

地方の学園を舞台にした爽やか日常系ミステリを探す人へ。また殺伐とした社会世相に疲れている人の清涼剤としてオススメ。

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