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星の子

"小学校時代の友達は、かなり少ないほうだった。というか、友達ができなかった。仲良くなってもいつのまにか離れてしまう"2017年発表にして芦田愛菜主演で映画化も決まった本書はカルト教団に次第にはまり歪んでいく家族を不穏さを感じさせながらも爽やかに描いた良作。

個人的には主宰する読書会で薦められた事、また2020年10月公開の映画で気になって手にとりました。

さて、そんな本書は幼い時に病弱だった主人公のちひろを救いたい一心で、父親が職場の同僚からすすめられた水『金星のめぐみ』を使用しているうちに【奇跡を信じ始め】次第に『あやしい教団』に本格的にのめり込み【金銭的には貧しくなっていく】両親、その環境下で育つ中学生になったちひろの学生生活が描かれているわけですが。

『カルト教団にはまった家族』と物語の外側から眺める読み手としては、ちひろ目線を通じても【ちらほらと滲み出る教団の手口】に当然に怖さしか感じないのですが。まだ子どもであり【多くを知らない(知らされていない)】ちひろの感じ方はいたって素直で。この対比が作品の大きな魅力になっていると感じました。

また本書を通じて。新興宗教というとオウム真理教の地下鉄サリン事件以降は【何でもすぐカルト教団と身構えてしまうし】個人的にも全く関心はないのですが。家族で星空を眺め続けるラストシーンの穏やかな会話描写は一見【何とも幸せな印象で】色々と解釈の広がるうまい終わり方だと感じました。(あと、大人になって『随分と印象が変わってしまった』エドワード・ファーロングが懐かしかった。。)

よみやすくも、穏やかな日常生活に潜む『危うさ』を描く作品が好きな方にオススメ。

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