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連続殺人鬼カエル男

"また、この日のみならず埼玉日報はもう一つ重要なものを世間に与えた。犯人の名前だ(中略)こんな名前をつけた〈カエル男〉と。"2011年発刊の本書は、サイコスリラーの雰囲気を保ちながら、心神喪失者の責任能力-刑法39条の是非も問う。どんでん返しの社会派ミステリ。

個人的にはミステリ強化読書中であることから、同じ著者の『さよならドビュッシー』とは全く違うタッチで『このミステリーがすごい!』にダブルエントリーされたことでも知られる本書も手にとってみました。

さて、そんな本書はマンションに蓑虫の様にぶら下げられた女性の全裸死体、そして傍らに置かれた子どもが書いたような稚拙な犯行声明文の発見から物語が始まり【吊るす、潰す、解剖する、焼く】と章の名前からも連想できる陰惨な連続殺人事件が続いていくわけですが。

ミステリには毎回あっさりと著者たちに騙され続けている私ですが。別の作者の傑作ミステリ『ハサミ"男"』を読んでいたことから、今回の名前は似ているカエル男の犯人も同じ仕掛けだと思って読んでましたが。まさか【もう一つ仕掛けがあるとは!】と驚きました。

一方で【謎を解き明かし犯人をつかまえる】本格ミステリ作品としてだけ捉えるならば、多少饒舌過ぎるというか【不要な描写が多いようにも感じられましたが】刑法39条といった社会問題的テーマを作品に意図的に盛り込みたいと思ったのなら仕方ないのかなあ。とも思ったり。

どんでん返しミステリ好きな方へ。また心神喪失者の責任能力についても考えてみたい方にもオススメ。

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