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自由研究には向かない殺人

"『ここへ来たのは....きみと取引をしたかったからなんだ』『取引?』『そう。ぼくはきみの調査に参加したい』声が少しだけ震えてる。"2019年発表、著者デビュー作である本書は女子高生が夏休みの自由研究で事件の真相に挑む、清涼感溢れる青春ミステリー。

個人的には『このミステリーがすごい!』などで高評価なことから、興味を持って手にとりました。

さて、そんな本書はイギリスの小さな町リトル・キルトンを舞台に5年前に町で起きた女子高生殺人(失踪)事件の真相を探る【いかにもミステリーらしい形式で】主人公ピッパ(ピップ)が、EPQ(自由研究)として、犯人とされた女子高生の交際相手のサリル(サル)の弟、ラヴィとパートナーを組んで調査を。。と言いつつ、警察やマスコミといった権限での調査はできない『単なる高校生』なので【グーグルやFacebookといったネットや SNS、スマホを駆使して】推理を組み立てていくのですが。

やはり、解説でも触れられていますが。『田舎町の殺人事件』となると、国内外問わずドロドロした人間関係や呪い的な言い伝えなど【閉塞感や陰鬱な展開】になる作品が多いイメージがあるし、また本書でも【人種や性差別、ドラッグやレイプ】といった重いテーマは取り上げられているのですが。主人公のピップ(ピッパ)とラヴィのフェアにしてハートフル【陽性で快活な人物造形や関係性】が効果的な『風通しの良さ』をもたらしてくれていて、最後まで安心して楽しむことが出来ました。

一方で、高校生としてのリアリティから物語のスケール感は大きくなく、また登場人物も限られるので『犯人探し』としては、比較的容易に検討がつきましたが。それでも【二段捻りで明かされるの真相、大団円なスピーチでのラスト】は工夫が感じられて良かったです。(余談ですが、タイプライターの話やイギリス・ザンジバル戦争。。知らなかった!)

 SNSやネットを駆使した現代風学生ミステリー好きな方、ハートフルな作品が好きな方にオススメ。

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