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算法少女

"『算法少女』ーこれは、わたしがつけた題ではありません。いまから二百年ほどむかし、じっさいに江戸で出版された算法(数学)の本の題なのです"1973年発表された本書は教育分野他から高い評価を受け、復刊された児童文学傑作。

個人的に以前読んだ『和算小説の楽しみ』で紹介されていたことから手にとりました。

さて、そんな本書は著者が幼少期に父親の話で知った、江戸時代は安永4年(1775年)当時に出版された【和算書で唯一、著者が女性名義である稀覯本】『算法少女』を題材に描かれた小説で。父から算法の手ほどきを受けていた町娘のあきが、ある事をきっかけに藩主の姫君の算法指南役に推挙されたことで『様々な人々の思惑』がからみ、物語は動いていくのですが。

まず、ジャンルこそ『和算』と日本古来の数学にして、今は多くの人に忘れられた特殊な分野を対象にしつつも、あくまで【児童向けにわかりやすく、読みやすい】工夫が感じられる内容で、ラストも含めて楽しめました。

また、やはり後書きで書かれているように出版から十余年で『絶版』になるも、熱心な高校教論がはたらきかけて『復刊ドットコム』に登録されたり、大学の講演などもあり、2006年に【30年ぶりに復刊されたエピソード】を知ると、江戸時代から様々な人々の想いが繋がって本書を今も手にとれる。ありがたさみたいな気持ちを感じました。

『和算』や、稀覯本『算法少女』に関心ある方はもちろん、爽やかな児童文学を探す人にもオススメ。

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