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カエアンの聖衣

"『あいつらみたいに、服に人間を支配させるんじゃないぞ』ぺテルは歓喜のあまり、その言葉をろくに聞いていなかった。カエアン製の、本物のフラショナール・スーツの所有者になったのだ"1976年発刊の本書はアニメ『キルラキル』着想の元にもなったワイドスクリーン・バロックSFの金字塔。

個人的には【ブシドー極めし伝説の超戦士】〈小姓〉池松八紘が無双する『禅銃』が大変面白かったので本書も手にとりました。

さて、そんな本書は【"服は人なり"という絶対の衣装哲学を持つ】カエアン文明、それに敵対しこちらは衣装はおろか【全裸で人前にでるのも是認される】ザイオード文明が存在する銀河を舞台に『禅銃』と同じく、密貿易業者グループ一味、そしてカエアン文明を密かに調査するザイオード調査団のストーリーが同時並行して進行、終盤あたりで合流して怒涛のエンタメクライマックスへ、そして見事に着地して終わるわけですが。

まず、やはり著書といえば、ラーメン二郎の"ましまし"【これでもか!これでもか!とアイデアが惜しげもなく詰め込まれている】のが大きな魅力となるわけですが。本書でも冒頭の惑星での超低周波音を発するラッパつき『咆哮獣vs音波干渉防止服』から始まり、宇宙空間にそれぞれ適応したロシアルーツの『巨大スーツ人vs裸体サイボーグ人』。ちなみにこちらは【"ヤクザ坊主"に率いられた日本人ルーツ】と、書いていても【何だかよくわからない怒涛のアイデア】に想像力が試され、くらくらしてしまいます。

一方で、特に多くは回収されない"それらのアイデア"が味として楽しめるようになってくると、本書は『衣装SF』エンタメ作としても完成度が高い事に気づき、広げに広がった【風呂敷を見事に畳んで終わる】のは流石といった印象で、直接的なイメージは確かに『キルラキル』でしょうが。展開に関しては『グレンラガン』も影響を受けているのがよくわかる。と感じました。

定番化、パターン化したSFに飽き飽きした方や、SFに難しげな宇宙物理理論ではなく【センス・オブ・ワンダー】的イメージを求めている方にオススメ。

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