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幸福の劇薬 医者探偵・宇賀神晃

オススメ780。"本当にそれでいいのだろうか。奇跡は訪れなくても、病とともに自然に朽ちていくほうが、人間らしい死とは言えないだろうか?"2019年発刊の本書は、認知症を題材に病院や介護現場の闇に切り込んだ医療エンタメ小説。

個人的には、こちらも関わらせていただいている【読書による文学賞】の推薦図書として手にとらせていただきました。

さて、そんな本書は正義感の強さから勤務先の大学病院の不正を告白し、結果として上層部の不興を買って退職する羽目になった医者を主人公に【認知症治療の画期的新薬を巡る思惑に巻き込まれていく】姿を描いているのですが。最初に印象に残るのは、決して分厚くはない本書に何度も登場する【食事シーンでうどんを選ぶ姿】でしょうか。主人公の頑固な性格描写を意図しているのかもしれませんが、本筋とは関係ない部分で食欲を刺激されて困りました(笑)

また『医者探偵』とあらすじでは紹介されていますが。素直に名推理を連発する姿が連想される他の探偵モノと違って、本作の主人公は【自ら積極的に探偵を自称することもなく】もっぱら診療所勤務の間に正義感に駆られて【何となく行動しているうちに】真相に辿り着くわけなのですが。こちらも何とも意外な印象で。後半20ページ位からラストまでの怒涛の展開には多少のドタバタ感はあれど【とにかく解決して良かった!】と安堵したり。

医療現場を舞台にしたエンタメ小説好きへ、また認知症や介護といった話題に敏感になっている人にも気分転換的にオススメ。

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