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あの本は読まれているか

"わたしたちはみなタイピストだったけれど、それ以上のことをする者もいた。毎日、仕事を終えてタイプライターにカバーをかけたあとにした仕事については、ひと事も口外しなかった。"2019年発刊の本書は冷戦中のドクトル・ジバコ作戦を下敷に描かれた著者のデビュー作にしてミステリ傑作。

個人的にはミステリに最近はまりつつある事から2020年の国内発売後に評価の軒並み高い本書も手にとってみました。

さて、そんな本書は冷戦下、黎明期の米CIAのタイピスト』たち、実際にタイピストとして雇われつつも運び屋などの諜報活動も行う女性たち、そして一方ではソ連、スターリン粛清下、言論統制や強制収容所行きの危険がある中、文学活動を行うパステルナークの姿を愛人、オリガの視点で【平行線に描きながら進み】CIAがパステルナークの『ドクトル・ジバコ』の海外出版を目論む作戦を立案した事から『タイピストたち』パステルナークたちの【互いの人生が交差、収斂する】するわけですが。

『ドクトル・ジバコ』の原作もハリウッド映画版も残念ながら読んだことも観たこともないのですが、スパイものとしての手に汗握る騙し合いというよりは、米ソの1950年〜1960年における男性社会、女性への性差別が当然に行われる中で強く逞しく、したたかに【生きる女性たちの姿が鮮明に描かれていて】まず印象に残りました。

また、本の力による『世界平和の為の作戦』が実際に行われた事にも驚きつつ、各所に本好きならニヤリとさせられる【文学作品の名前やセリフが頻出する本書】海外文学好き、本好きな人なら堪らないんじゃないだろうか。とも思いました。(しかし『ドクトル・ジバコ』のヒロインと同じ本名、ラーラを持つ著者、出来過ぎな位に運命を感じさせられる)

女性たちが華麗に活躍する作品が好きな人や、スプートニク他、1950年〜1960時代の文化が好きな人にオススメ。

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