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青春と変態

"国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。とまあ、どうせエゲツナイ変態日記、せめて書き出しくらいは格調高く始めてみよう。"1996年発表の本書は美術家である著者による初著作にして表現のエッセンスが詰まった変態的純愛小説。

個人的には偽悪的な作風から好みの別れる美術家だと思いますが、個人的には朴訥な人柄、作品には真摯さを感じ個展にも伺ったりする著者がどんな"小説"を書いていたのだろう。と興味を持って手にとりました。

さて、そんな本書は高校生の"合田くん"による独白形式の日記として、スキー合宿での友人たちの恋愛模様(青春)と、合田くんの特殊な性癖もとい性犯罪(変態)の様子が綴られているのですが。

著者いわく"私小説や告白小説と呼ばれることには抵抗がある。あくまで素人として書く"気持ちで主人公の名前を著者と同じ合田くんとした。との事ですが。20後半で"今なら青春の残滓が少しはある"と突き動かされるように2ヶ月ちょっとで書き上げられ、当初は同人誌に掲載された本書。端端から【現在の芸術活動にもつながる要素】が散見されて、個人的にはとても読みやすく面白かったです。

また、著者の作品にもこちらも共通する"表面的な"要素として、前半120ページくらいまでは延々と合田くんの特殊な性癖がどぎつく描かれているので【ちょっと人に(特に女性には)すすめる事には抵抗ある】のですが、一方で後半の展開は【とても純文学っぽく、また青春の生々しさがうまく閉じ込められいて】かなり古典の読書家であることが伺えて感心しました。

美術家としての著者の原点を知りたい方、また青春の甘酸っぱさを追体験したい"男性"にオススメ。

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