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京都 銀月アパートの桜

"幼い者がある日、『世界』という謎に満ちた一冊の本に向きあおうとするとき、その表紙にふさわしいのは、たぶん『銀月アパート』のような存在ではなかろうか。"2010年発刊の本書は、京都は左京区に住む詩人による、うつりゆく季節と共にたゆたう写真文集。

個人的には、散歩ついでに様々な映画が撮影されていることでも有名な銀月アパート前を通り過ぎた際に『誰か銀月アパート題材に本を書いたりしてないかな?』と検索、本書に辿りつきました。

さて、そんな桜の美しさでも知られる銀月アパートの写真が表紙の本書ですが。とは言え、内容としては、詩人として半世紀あまり左京区に住む著者が、銀月アパート近くのヴォーリズ建築『駒井家住宅』でポエトリーリーディングをしたり、精華大学でダライラマ法王の講演に参加したり、『茂庵』を訪れたりといった【著者の京都での追憶の日々が中心】となっていて、銀月アパート自体に関しては最終ページでわずかに友人が入居したのを縁に訪れたことが記されているだけなのですが。

それでも、最近になって京都に引っ越してきた自分にとっては、10年から20年前の左京区暮らしの様子を著者のやわらかい文章を通じて追体験できるような感覚があって、例えば【もしいつか。左京区に住む機会があったら】そんな妄想をしながら本書を楽しませていただきました。

また、本書には文書の合間に表紙と同じく著者によって撮影された古い建築物の貴重な写真が掲載されているのですが。眺めながら"ああ、あの建物は以前はこんな姿だったのか"と【思いを馳せるキッカケにもなりました】変わらないもの、変わりゆくもの。どちらも確かな意味があって、それぞれに美しい。

銀月アパート好きはもちろん、左京区に縁のある方に。また詩人な方々にもオススメです。

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